「ポケカ投資」ブームで最高益 “造幣局”と化したポケモンが、高額転売に取るべき「金融政策」とは古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)

» 2023年06月09日 10時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

ポケモンは「日銀」と同じ役割?

 ポケモンカードの価値は、紙幣と同じように紙という材料そのものではなく、紙に描かれているブランドや信用にあるため、利幅(発行益)が大きい。

 印刷することで多くの製品を量産できる点も紙幣と似ていることから、発行する同社には“造幣局”というあだ名までついた。(ちなみに、日本の造幣局は硬貨を製造するための機関であり、お札を刷っているのは「国立印刷局」である)

 しかし、同社の役割をよく観察すると、同社は“造幣局”だけでなく中央銀行の役割までになっているといえる。

 限定版やレアなカードは供給量が制限されており、レアリティのグレードに応じて封入率が調整されている。この点に、中央銀行の行う金融政策や貨幣政策と類似性があるといえるだろう。

 今は、市場に供給されるポケモンカードの数が需要に追い付いておらず、ポケモンカードの価値が上がり続けている状態が転売や窃盗といった副作用を生んでいる。そのため、市場に供給されるカードの数を増やせば、多くのユーザーにカードが行きわたり、投機熱も収まるはずだ。

 しかし、市場にレアカードを無制限に投入すれば、誰でもパックをそれほど買わずにレアなカードを手に入れられることとなり、同社の売り上げが低下するリスクがある。それだけでなく、ポケモンカードの「レアカード」に対する信用が低下することにもつながり、ユーザー離れを引き起こす可能性がある。

 転売対策としてカードを単に大量発行させてしまうと、行き過ぎた「円安」ならぬ「ポケカ安」を引き起こす可能性があり、発行者側の収益性を蝕(むしば)んでしまうというデメリットがある。

 このように、カードのような商材を取り扱う会社のビジネスパーソンにとって、金融政策を理解することは非常に有効だ。

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