「ポケカ投資」ブームで最高益 “造幣局”と化したポケモンが、高額転売に取るべき「金融政策」とは古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

» 2023年06月09日 10時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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ポケモンが実行した「金融政策」とは

 現に、同社は新弾ブースターパック「スノハザード」と「クレイバースト」の品薄騒動にあたって、「理想的な金融政策」を実行していた。

 この新弾パックは、23年4月に転売ヤーの標的にもなったことで大幅な品薄状態に。メルカリやカードショップにおける市場価格が高騰しており、顧客が入手困難な状態が続いていた。

 しかし、後に公式サイトで再出荷と受注生産の検討がアナウンスされると、実際に出荷が行われる前から高騰していた価格相場が暴落し、価格が落ち着くという現象が発生したのだ。これは中央銀行における「フォワードガイダンス」と同じ効果であったといえるだろう。

 フォワードガイダンスとは、中央銀行が将来の金融政策方針を前もって表明する金融政策の1つで、実際の施策を行う前に、言葉だけで市場の期待に働きかけて価格や金利に影響を与えるというものだ。

 ポケモンの発表も「これからブースターパックが大量に発行される」という緩和的なカード政策を事前に発表することで、転売を行う人々が少しでも早く在庫を処理しようと動いた結果、価格が適正化したという顛末(てんまつ)をたどった。

photo 「理想的な金融政策」を実行していた(画像はイメージです。提供:ゲッティイメージズ)

転売対策に日銀OBの採用が有効?

 さて、金融政策を立案する日本銀行のOBは大学教員や独立行政法人といったキャリアに転身するイメージもあるだろうが、実はトレーディングカード会社のように転売対策に頭を悩ませるような企業でこそ、バリューを発揮できるのではないかと筆者は考える。

 現代の日本では、転売のように資本主義や市場原理を盾としていきすぎた値段の釣り上げを行う者が増えている。

 金融市場でも、市場原理を利用する投機筋やヘッジファンドといった市場参加者がいるが、このような参加者に対して中央銀行は為替介入や上記でもピックアップしたフォワードガイダンスといった金融政策を駆使することなどで戦ってきた。

 ヘッジファンドや投機筋のような実態から乖離(かいり)した不合理な値動きはもはや投資の世界だけでなく、一般消費者の市場にまで及んでいる。

 事業会社においても、日銀OBのような金融政策と市場原理に通じた人材を登用することで、転売という投機的な動きに対して効果的な施策を打ち出せるようになるのではないだろうか。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら


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