それでは、日本のスマホメーカーはどうすれば生き残ることができたのでしょうか。これは難しい問題です。なぜなら、世界のスマホメーカーも同様に苦しい状況だからです。
世界のスマホ市場では7割をAndroidが占めていますが、これは出荷台数ベースの話であり、営業利益ベースでは8割強をアップルが得ているとの調査があります。
Androidのメーカーは残りの2割弱を取り合っているわけですが、その大部分はサムスンが取っているようです。その他のメーカーは生き残っているだけで褒められるレベルといえるでしょう。
この厳しい状況の中、日本の端末メーカーは確実な売上が期待できる携帯キャリア向けビジネスに注力してきたと考えられます。
日本の消費者がスマホを買うときにはキャリアの店舗や売り場を訪れます。ハイエンド機種はキャリアから割賦で買うことが一般的なので、オープン市場で売れるスマホはミッドレンジ以下です。
海外メーカーも同様です。サムスンは日本国内で長らくキャリアビジネスを優先してきました。日本進出をもくろむ中国メーカーがオープン市場を足掛かりとして、必死になってキャリア採用を目指したのもそのためです。
海外への挑戦という点では、FCNT(当時の富士通)は「らくらくスマートフォン」をフランスで発売したこともありますが、続かなかったようです。イメージセンサーでは大成功したソニーも、スマホは展開地域とターゲット層を大幅に縮小し、生き残りを図っています。
政治的には期待できる点もありました。ドコモはある時期から中国メーカーと距離を置くようになり、明言はしていないものの、経済安全保障的な意味合いを感じるところがありました。
そのため、ドコモは関係の深い国内メーカーをつぶすようなことはしないと筆者は考えていたのですが、さすがにFCNTは気付いたときには手遅れの状態だったのかもしれません。
不幸中の幸いとして、FCNTはシニア向け端末とあわせて、シニア向けのSNS「らくらくコミュニティ」などのサービス事業も運営していましたが、こちらは複数の事業会社よりスポンサー支援の意向表明があったと発表されています。
これを踏まえた後付けの解釈にはなってしまいますが、シニア向けのサービス事業に特化することで、端末事業からは早期に撤退することが実は最善手だったのかもしれません。
ただ、FCNTが撤退しても同社が満たそうとしていた需要が消えてなくなるわけではありません。FCNTは「誰一人取り残さないデジタル化社会」への貢献を掲げ、政府や行政が推進するデジタル化における役割を期待できる面がありました。
残る日本勢として、ソニーがハイエンド中心の製品展開を続けていることを考えると、シャープ(親会社は台湾企業ですが)にかかる期待が大きくなりそうです。
1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。
ヤフーニュース個人:「ITジャーナリスト2.0 山口健太」
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