東京・上野で長らく街のシンボルとして親しまれてきた「ABAB(アブアブ)」上野店が2024年6月末で閉店する。
「建物老朽化対応並びに耐震措置」などのためのクローズで、1945年10月の出店より、約78年間にわたって同所で営業してきた歴史に幕を下ろす。特に70年、「アブアブ」としてオープンしてからは、1階から7階まで所狭しとファッションアイテムが並び、上野のランドマークといった存在だっただけに、閉店を惜しむ声は多い。
アブアブは日本のファッションビルの草分けの1つ。特に90年代は、「渋谷109」の強烈なライバルとして、ティーンズ女性のファッションを主導した。渋谷109より全般的に安価で、「アメ横」的なにぎわいがあり、庶民的な雰囲気があった。しかし、「ユニクロ」「GAP」などのファストファッションやネット通販の台頭によって、近年は売り上げと影響力の低下は否めなかった。ユニクロをインショップとして誘致していた時期もあったが、長期の低落傾向を食い止めるには至らなかった。
しかも、2020年から3年間続いたコロナ禍で、ステイホームが奨励されたため、外出に使うファッションアイテムの消費は、当然のことながら低迷した。運営するアブアブ赤札堂の本社もアブアブと同じビルにあるが、同社としてはアブアブを移転して復活させる予定はないとのことだ。
109系ブランドの象徴であった「セシルマクビー」が、20年11月に実店舗による営業を終了して、全店閉店したのは記憶に新しい。そして、今回のアブアブの閉店。アブアブや渋谷109が全盛だったのは昭和末期から平成初期。この時期は、その後「失われた20年」ともいわれる日本の長期停滞、デフレーションによる不況が続くとは誰も考えてはおらず、まだまだ日本経済全般に勢いがあった。
「ギャル服」といわれたティーンズのファッションも、そうした勢いが感じられるアクティブなデザインが主流だった感がある。一つの時代の終わったという印象を受ける。
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