現在も上野は上野マルイはもちろん、アメ横をはじめ「松坂屋上野店」「アトレ上野」といった商業施設が集積する一大商業地。文化施設では「東京国立博物館」「国立科学博物館」「国立西洋美術館」「東京都美術館」「上野動物園」などが集中する「上野恩賜公園」を擁する。
浅草、秋葉原とセットで観光するインバウンドの外国人にも人気のスポットでもある。コロナ禍が終わってきた現状で、特に廃れたような印象はない。
しかしながら、上野には渋谷、新宿・歌舞伎町、池袋のようにめぼしい再開発のプロジェクトはなく、今回のアブアブ閉店が、にぎわいを失わせる要因にならないかが懸念される。
東京の東側のターミナル駅では、東北・上越・北陸新幹線の始発駅が上野駅ではなく東京駅となり、リニア中央新幹線の始発駅として予定されている品川駅が存在感を増しているのに対して、上野駅はかつての東北、北関東、新潟、常磐方面への玄関口としての役割が薄れてきている。
また、中距離電車でも、2001年の湘南新宿ラインの開通以来、池袋駅、新宿駅、渋谷駅といった副都心への利便性が高まったため、上野駅の地位が相対的に低下した感がある。
東京の北東部のターミナルとしては、北千住駅が上野駅に取って代わるようになり、JR、東武、つくばエクスプレスから東京メトロを乗り継いで、東京都心部に出るルートが一般化してきた。特に東武スカイツリーラインからは、渋谷まで乗り換えなしで直通するようになった。
そうなると、上野で降りてアブアブに行くより、渋谷や原宿に行った方が、利便性が高いとティーンズも考えるようになったということだろう。渋谷や原宿ではまだ若者のファッションが健在なのは、交通網の発達にも起因している。
アメ横の喧騒(けんそう)は絶対になくすべきではないが、上野が副都心や東京駅周辺、品川にまちづくりで後れをとるのは寂しい限り。なんらかの強力な活性化策で、ティーンズも集まる街を維持してほしい。若者にとって縁遠い街になってしまっては、今は良くても将来の衰退につながるからだ。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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