マツダの「CX-5」はどうなるのか 思い切って刷新できない事情池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/3 ページ)

» 2023年08月07日 09時14分 公開
[池田直渡ITmedia]
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マツダが抱える根深い問題

 問題は結構根深い。まず第1にCX-5の出来が極めて良いということだ。筆者も過去に極めて高く評価してきたし、現在でも基本は全く変わらない。マツダ車の中で、最も多くの人に自信を持っておすすめできるクルマだ。

 第2に、現行商品群の中では値頃感が特異で、明らかに安く感じること。もともと初代CX-5がデビューしたときは、まだマツダのブランド価値が低かったこともあり、値付けが今と比べれば弱気だったことがある。というよりはまだ世間がマツダのブランド価値を認めてくれるかどうかが分からなかった。

 ついでに言えばSUVという車形そのものがまだ市民権を得ておらず、売れるかどうかは全然分からない時代背景もあった。

 つまり、CX-5は現在のマツダの礎を切り拓いたパイオニアであり、だからこその旧世代の尻尾を最も濃厚に残しているともいえる。そしてそれこそがCX-5が売れに売れていることの原因でもある。

マツダが問題を切り抜けるには

 さて、マツダは果たしてこの問題をどう切り抜けるのだろうか? 選択肢は3つある。1つ目は先に述べた通り、第3のプラットフォームを新設計し、CX-5の完全な後継モデルを作ること。2つ目はCX-50をベースに、車幅を狭めた派生モデルを作って、スモール群の1車種に組み込むこと。3つ目は、このままCX-5に商品改良を加えずに徐々に陳腐化させていき、消極的にCX-50やCX-60への乗り換えを進める方法。

 どれも怖い。新プラットフォームの追加は経営コストが嵩む(かさむ)。CX-50に置き換える方法は客が納得してくれなければ、販売台数の激減につながる。そういう意味では第3の選択肢が最も穏当なのだが、いかにも引き伸ばし戦略でスピード感がないし、場合によっては単にジリ貧に向かいかねない。

 ということで、果たしてマツダはこれにどういう決断をするのか、その進捗(しんちょく)をじっくり見ていきたいと思う。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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