では、なぜ労働者も消費者も大激減しているのに、最もその影響を受けるはずの中小零細企業の倒産は少ないのかというと、「過保護すぎる倒産対策」のおかげだ。
本連載で『「中小企業淘汰論」はなぜ“炎上”しにくくなったのか 日本に残された時間』『会社の倒産は減っているのに、なぜ労働者は“幸せ”そうに見えないのか』などで繰り返し触れているように、同じ経済規模の先進国と比べて、日本企業の廃業率は「異常」というほど少ない。
例えば、内閣府の「日本経済2020−2021 ー感染症の危機から立ち上がる日本経済−」(令和3年3月)の中では、米国、英国、フランス、ドイツとの開業率・廃業率が比較されており、こう結論付けられている。
「廃業率は、英国が11%程度、米国が8%程度と、開業率と同程度の廃業率となっているなかで、我が国の廃業率は1.5%程度と圧倒的に低い」
では、なぜ日本は廃業率がダントツで低いのか。それは米国や英国の経営者と比較して、日本の経営者はすば抜けて経営センスが優れているから……などではなく、シンプルに税金でゲタを履かせてもらっているからだ。
1960年代から「中小企業は国の礎」というスローガンのもと、税金免除、補助金や助成金というバラマキや、ゼロゼロ融資のような手厚いサポートが何十年も続けられてきた。要するに、日本の中小企業の廃業率が圧倒的に低いのは、先進国の中小企業の中でも圧倒的に甘やかされて育てられてきたからなのだ。
そして、もっと言ってしまうと、この「過保護すぎる倒産対策」こそが日本経済低迷の原因だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング