どうするGap 思い出深い銀座の旗艦店は閉店 このまま日本からも撤退してしまいそうな苦しい事情長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)

» 2023年08月24日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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 今後、ギャップの“希望の星”は08年に買収したヨガ・ランニングなどのアスレチックウェアを販売する「アスレタ」だ。3年間で売り上げを10億ドルから20億ドルへと倍増させると、強気な発表をしていた。

 現状、本拠地である北米においてブランドを確立することで精一杯だろうが、将来的には日本でもチャンスがありそうだ。カナダ発祥でヨガなどのアスレティックウェアを販売する「ルルレモン」が17年にギンザシックスに1号店をオープンして以来、徐々に認知を広げて22年11月には8店舗まで増えた。23年4月には、ギンザシックスの店舗をリニューアル。5階から4階に移転し、面積が倍増した。

 アスレタもそろそろ、日本に上陸して種まきをするべきタイミングではないだろうか。ただ、参入障壁もある。ブラジルのスポーツウェアブランド「アスレタ」が商標を持っているため、展開できないという説があるのだ。北米で好調なオールドネイビーと将来性十分のアスレタというブランドを擁しながら、このように日本で展開しにくい事情があるギャップは今後も苦境が続きそうだ。

ブラジルのブランド「アスレタ」が参入障壁に?(出所:アスレタ公式Webサイト)

「アメカジ」冬の時代

 ちなみに銀座で店舗を強化しているギャップの競合店は、ルルレモンだけではない。

 21年9月にユニクロが12階建の銀座グローバル旗艦店をリニューアル。製品の機能性に関するわかりやすい展示や初のカフェ併設店として話題になった。すると、ザラも負けじと22年4月に銀座店をリニューアル。デジタルとサスティナビリティを表現したコンセプトストアとして生まれ変わった。23年5月には、H&Mの銀座銀座並木通り店がオープンした。18年に銀座店を閉めて以来、5年ぶりに銀座で復活した。日本で初めてインテリアの「H&M HOME」を取り扱っている。このように、ユニクロ、ザラ、H&Mが銀座の店舗の販売力を強化する中、押し出されるようにギャップは銀座から撤退していくのだ。

 銀座からだけでなく、日本からの撤退の噂も聞こえてくる。前述した小島健輔氏の記事によれば、ドイツで04年にH&Mへ事業を売却して撤退。21年には英国とアイルランドの全81店を撤退して、ECに特化した。フランスとイタリアの店舗もフランチャイズへと切り替えるようだ。中華圏では、中国EC大手の宝尊電商に事業を売却して、20年間の独占ライセンス契約を結ぶ。

 日本だけでなく世界的に「アメカジ」が飽きられてきた傾向があり、ギャップに限らず、「アメリカンイーグル」やフォーエバー21も近年はパッとしない。19年に国内33店を閉店し日本から撤退したアメリカンイーグルは、22年に再上陸。渋谷と池袋から店舗展開を始めた。フォーエバー21は19年に米国の本体が倒産。国内14店も全店閉店した。その後、伊藤忠商事が国内販売権を取得して、アダストリア子会社の運営で再上陸したが、まだ店舗数は少ない。

再上陸したアメリカンイーグル(筆者撮影)
フォーエバー21も再上陸した(出所:アダストリア発表のリリース)

 ギャップはいっそのこと、「SHEIN」のように品質には目をある程度つむり、思い切り安くしてECに徹するか。あるいは伊藤忠商事のような商社にライセンス権を売るか。このまま不採算店を整理しながら、再浮上を狙うか。選択肢はあるが、どんな一手を打つのか注目だ。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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