売上苦戦していた「しまむら」なぜ復活? 「しまパト」「しまラー」という画期的システムが果たした役割長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)

» 2023年08月04日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 設立70周年を迎えた、しまむらの業績が好調だ。

 2023年2月期の連結決算は、売上高6161億円(前年同期比5.6%増)、経常利益544億円(同7.5%増)となった。営業利益と親会社株主に帰属する当期純利益も、それぞれ7.9%増、7.3%増で、過去最高の売り上げと利益を達成している。

 今期(24年2月期)に入っても好調を持続しており、第1四半期(23年2月21日〜5月20日)の売上高は1571億円(同5.2%増)となった。ただし、経常利益は147億円で1.5%減となっている。営業利益と当期純利益も、それぞれ0.6%減と1.8%減で、昨今の原材料費、エネルギーコスト、人件費などの増大の影響を受けた。

 利益が2桁も激減するようだと問題だ。しかし、ロシア・ウクライナ戦争をはじめ、世界各国でコロナからの回復過程で引き起こされた人手不足など、背景にある要因は一企業では解決しにくいものが多い。なんとか業務効率化を図り、近い将来に改善することを期待したい。コスト増の影響はマイナスのことばかりではない。人件費では今年4月に正社員で6.5%、パート社員5.2%の賃上げを行った効果が出た。この賃上げにより4月以降のパート社員の応募人数が約3割増加し、人手不足の店舗が減少したからだ。

しまむらが好調なのはなぜ?

 しまむらに限らず、コロナの流行に伴う行動自粛の規制がなくなり、アパレル各社の業績は急回復している。しかし、しまむらはコロナ前から不振に陥り、18〜20年まで3年連続で売り上げが落ちていた。それに伴って利益も落ちていて、最悪のタイミングでコロナ禍に突入した。

 しかし、売れ筋商品の見直しを進め、不採算店を整理し、広告をデジタルシフトした結果、21年より売り上げが回復した。コロナ禍での出来事なので、特筆すべき点といえる。

 業績回復の要因はどこにあるのか。同社の店舗は郊外に多く、コロナ禍特有の巣ごもり需要の発生により、消費者の身近にあって公共交通を使わず車で行ける。こうした有利な条件が幸いした面もあった。

 都心部の百貨店、ファッションビルを主力にするアパレルが、コロナ禍の外出自粛で軒並み壊滅的な売り上げ減に見舞われたのとは対照的だった。つまり、コロナ禍による外出機会の激減により、多くのアパレル企業が苦戦する中、しまむらは巣ごもり需要を巧みに取り込み、なんと創業以来最高の売り上げと利益をたたき出した。

 それでは、しまむらがコロナ禍を跳ね返して、快走する理由をひも解いていこう。

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