#しまパトで躍進 「しまむらの服」がここにきて“爆売れ”し始めているワケ古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)

» 2022年02月11日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 しまむらの決算が過去最高を更新した。

 オミクロン株の猛威が日本経済を脅かそうとする中で、しまむらの2022年2月期第3四半期決算は快進撃だった。売上高はコロナ前の19年対比で10.8%増の4368億円となっており、第3四半期単体で見ても、第3四半期までの累計で見ても過去最高の売り上げとなっている。純利益も、コロナ前の19年対比で113%増の269億円と、第3四半期までの累計で過去最高を更新した。

 ファッション関係の小売店といえば、作業服からカジュアルウェアまで進出してきたワークマンが新進気鋭のブランドとしてもてはやされることが多い。しかしながら、ワークマンの年間売上高はいまだ1000億円程度に過ぎない。この売上高の規模は、しまむらの年間売上高水準である5000億円には及ばない。そのため、ワークマンは成長期待込みで評価されているということになるだろう。

17年に5654億円の売上ピークを付け、そこから下降気味だったしまむらの業績が回復してきている(グラフ:バフェットコード)

 成長性という意味では、確かにしまむらは17年2月期をピークとし、コロナ禍が発生する3年以上前から売上高を減少させてきたブランドだ。同社は1961年に1号店を出店し、そこからもう60年が経過している。地方都市の郊外に建てられた店舗のなかには、色褪せたロゴが目立つ老朽化したものもみられ、若者を近寄らせない雰囲気があった。

 客層もしまむらブランドと同様に歳を重ねてきたということもあり、これまでは「しまむらで買った」ことをあえて発信することを憚られるという雰囲気もあった。しかし、ここにきてしまむらの服が若者に向けても”爆売れ”し始めているのは、決算から見ても明らかだ。

 「ブランドイメージの若返り」は、リスクも大きい経営判断となる。極端な若返り施策を打ってしまえば、既存の磐石な顧客層を手放してしまうことになりかねない。そして若者が振り向いてくれる保証はどこにもない。そのため若返り施策は結果として中途半端なものになってしまうことも度々ある。

 しかし、しまむらはインフルエンサーやネット広告を活用して若者コミュニティをつくりあげ、消費者自身が広告塔として情報を発信してきた。これにより、ブランドイメージの若返りのみならずこの度の好決算を導くことに成功したのだ。

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