広告戦略も見直した。
従来、しまむらはテレビCMや新聞の折込チラシを重視してきた。しかし、20年の夏からは視聴者が減ってきたテレビや、部数が激減している新聞の広告を削減して、Web広告へとシフト。同年秋からは動画広告にも力を入れるようになった。
広告のデジタルシフトによって、高額なテレビや新聞向けの広告予算を大幅にカットできたのが、利益率向上の主因である。
さらには、デジタル販促を多様化させる施策として「LINEチラシ」への掲載を新規にスタート。Z世代(およそ15〜25歳)に向けては「TikTok」のしまむら公式チャンネルを積極的に活用して商品をアピールした。こうした取り組みで、SNS会員数は、LINE、Instagram、Facebook、X(旧Twitter)、YouTube、TikTokを合わせて、23年5月20日には3300万人となった。前年同期比11.7%増と快調に伸びている。
リアルタイムに情報が出せる、デジタルメディアの特性を生かした機動的な発信をしている。一例を挙げると、梅雨の時期、天候が急変して雨が降り出したときには、レイングッズをSNSでPR。また、売り上げが伸び悩む商品は、値下げ後にすぐSNSで発信して来客を促す。このように、店単位、地域単位で、きめ細かい発信を行っている。
リアルとデジタルのチラシの使い分けも、ノウハウが確立されてきた。お盆の時期に、夏の帰省需要が見込める東北地方などは、新聞の折込チラシを重視。その他の地域ではWebチラシと、広告宣伝費の費用対効果の最大化を目指している。
しまむらのDXの推進は宣伝分野に止まらない。
iPadで売り上げが好調な売場の陳列画像を共有。他店も成功事例をまねた売場づくりを行うなど、イントラネットによるナレッジ活用が成果を生んでいる。店員教育の面でも、商品知識や店舗業務に関する動画を作成して、社員のスキル向上につなげている。
最終的には人口減による人手不足に対応するため、次のようなことを行うという。顧客データを積み上げ、個々の店の顧客特性に合った商品発注を人の手を介さずにAIが自動でできるように、データ分析の精度を上げていく方針だ。
このようにDXを進めるしまむらであるが、公式オンライン販売サイトは20年10月に立ち上がったばかりだ。ECは急成長しているというものの、総売上の5%にまで伸ばすのが目標という段階だ。日本のアパレル企業が平均して10%程度をECで販売しているのに対して、遅れている。特に、肌着などの実用衣料は、過疎が進む地方では、街の洋品店が閉店して購入する場所がなくなってしまったというケースも多い。もっと売り上げが伸ばせるはずだ。
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