リテール大革命

「配送部門に無理を強いれば大丈夫」は通用しない――物流2024年問題、まずやるべきこと仙石惠一の物流改革論(2/2 ページ)

» 2023年08月25日 09時00分 公開
[仙石惠一ITmedia]
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まずは知ることから 「輸送の見える化」を実行

 第4の対策として「輸送の見える化」を実行しよう。まず次の2つをトライしてほしい。

 1つ目は「トラック積載率」(以下、積載率)だ。見える化する目的は、トラックを有効活用しきれていないことを数字で実感することにある。筆者もたくさんの会社のコンサルティングに携わってきたが、1社も正しい積載率を把握できていなかった。つまり、少々骨の折れる仕事であることに間違いない。

積載率管理を実施しよう

 さて、積載率とはトラックの保有する能力に対する積載貨物のボリュームの比率のことを指す。トラックの保有能力には重量的能力と容積的能力の2つがある。つまり積載率も重量的積載率と容積的積載率の2つがあるのだ。計算の仕方は以下の通り。

重量的積載率=積載重量※1÷トラック重量的能力×100

容積的積載率=積載容積※2÷トラック容積的能力×100

(注1) 積載重量=Σ(製品重量+容器重量)

(注2) 積載容積=Σ荷姿容積

 大切なことは、積載荷物の荷姿容積(縦×横×高さ)と荷姿重量(製品重量+容器重量)が分かっていないと、この計算もできないということだ。物流のデータ整備が重要になる。

 積載率の計算は配車時に行う。なぜなら、一定の積載率になる条件で配車を行うことでトラック台数減に寄与するからだ。重量的積載率と容積的積載率がともに一定の水準になったら配車することが望ましい。

 ただし、そのために積み付けの工夫など実行すべきことがあるが、第一歩としては積載率を把握するだけでもよい。参考までに積載率管理の例を図表1に記しておく。

 輸送の見える化の2つ目が「輸送マップ」だ。目的は輸送におけるムダをあぶり出すことにある。方法は超カンタン。現時点で会社が行っている輸送を地図上にプロットするだけだ。

 輸送には生産や販売に必要な物品を調達するための輸送がある。これを「調達物流」と呼ぶ。次に会社の拠点間における輸送がある。前工程と当工程が別の場所にある場合などだ。さらに、製品を取引先まで届けるために輸送が発生する。これを「販売物流」と呼ぶ。輸送マップ上には自社拠点、調達先、販売先、ルート、物量、平均積載率などを記す。ルートは実際の経路ではなく直線で結ぶことでも構わない。

 図表2をご覧いただきたい。調達先の近くに販売先があることが分かる。この輸送を調べてみると、調達時は調達先がトラックを配車し、納品後はトラックが空車で帰っていた。

輸送マップを作成しよう

 一方で、販売先までは自分の会社がトラックを配車して製品を届けているが、納品後は調達同様にトラックが空で帰ってきていた。このように、輸送マップを作成すると今まで気付かなかった問題点が顕在化する。そのため、次の改善アクションにつなげられるのだ。

 今回はある意味で聖域化されてきた「顧客との取引内容の改善」と、「輸送の見える化」について紹介した。2024年問題については数年前から話題になっているため、意識の高い会社では前者の改善に取り組んでいる。

 ぜひ会社の中でコンセンサスを取りながら進めていただきたい。次回は実際に行うべき技術的対策について解説する。

著者プロフィール:仙石 惠一(せんごく・けいいち) 

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合同会社Kein物流改善研究所代表社員。物流改革請負人。ロジスティクス・コンサルタント。物流専門の社会保険労務士。

1982年大手自動車会社入社。生産管理、物流管理、購買管理を担当。物流Ierの経験を生かし荷主企業や物流企業の改善支援、各種セミナー、執筆活動を実施。

著書『みるみる効果が上がる!製造業の輸送改善 物流コストを30%削減』(日刊工業新聞社)『業界別 物流管理とSCMの実践(共著)』(ミネルバ書房)

その他連載多数。

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