というわけで、懸念されている観光業へのダメージも限定的ではないかと思う。中国国内メディアが騒ぐことや、渡航自粛の呼びかけなどで、中国からの訪日客が減ったとしても、日本にリピーターとして何度も訪れているような“親日”中国人観光客の中には、日本の食の安全性を信頼している人も多い。日本側が科学的に信用できるデータを出し続ければ、すぐに客足は戻ってくる。共産党が国家のガバナンスに「反日」を利用しているだけであって、一般市民はなんやかんや「日本観光」が大好きだということは、これまでの訪日観光客数が物語っている。
もちろん、どこの国にも迷惑行為をする人はいる。中国の迷惑系ユーチューバーのような人たちがアクセス稼ぎのために、日本のラーメン屋にやって来て、「では、さっそく汚染水でつくったラーメンを食べてみます」などとレポートしたり、寿司屋に行って板前に「汚染された魚を使って寿司を出すのはどんな気持ちですか」とか嫌味を言ったりするなんてバカバカしい騒動もあるかもしれない。
しかし、日本の醤油さしペロペロ少年と同じで瞬間風速的に大騒ぎになって、それで終わりだ。尖閣諸島中国漁船衝突事件が起きたときも、福島第一原発事故が起きたときも、アパホテルに南京事件は捏造だったという本が置いてあったことで中国政府が批判をしたときも、その直後は「もう日本には行けない」とヒステリックな騒ぎが起きるが、ほどなくすれば観光の客足は戻る。むしろ、その騒動以前を上回る勢いで、日本にやって来るのが中国人観光客なのだ。
ただ、そんなダメージが一過性の観光業よりも、はるかに深刻な被害を受ける業種がある。それはいわゆる「中国ビジネス」をしている企業だ。
「ああ、確かに中国では日本人学校に石や卵が投げ込まれているからな」と納得する人も多いだろう。確かに、これまでの大規模な反日デモが起きた際には、暴徒化した人々によって、現地の日本企業の窓ガラスが割られたり、日本車がひっくり返されて燃やされたなんてこともあった。今回も騒動が落ち着くまで中国にいる邦人や現地の駐在員の保護が必要だろう。
しかし、筆者が懸念しているのはそこだけではない。中国に生産拠点があったり、中国企業をパートナーにしてビジネスをしているような企業が、「日本人からの嫌がらせ」に遭う恐れがあるのだ。
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