「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのかスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2022年10月18日 13時09分 公開
[窪田順生ITmedia]

 マルチ商法を展開している日本アムウェイ合同会社に対して、消費者庁が勧誘などの一部業務を6カ月間停止する命令を出した。

 報道によれば、『メッセージアプリで知り合った相手を食事に誘った後、密室で化粧品の購入をすすめ、相手が断ると「絶対に今買ったほうがいい」などと執ように勧誘を続けて強引に入会させ、その間、会社に関する書類を一切交付していない』(NHK NEWS WEB 2022年10月14日)などの事例が確認され、これが特定商取引法違反にあたるという。

 そんなニュースを聞くと、「相変わらずそんなことやっているんだ……懐かしいな」とノスタルジックな感傷にふける人も少なくないのではないか。40〜50代がまだ若者だった時代、こういうスタイルの勧誘は決して珍しくなかったからだ。

米国で生まれたアムウェイ(出典:ゲッティイメージズ)

 実は何を隠そう、筆者も大学生だった27年ほど前、バイト先で知り合った、きれいなお姉さんに「ウチで楽しい食事会があるから君も来る?」と誘われて、ドキドキしながら指定されたマンションへ行ったら、アムウェイの洗剤などの実演販売だった――という苦い経験がある。

 同様に声をかけられた若い男性たちと気まずいムードの中で、お姉さんから「実はここだけの話、あの人気アイドルもサファイアDD(会員のランク)なのよ」なんてディストリビューターになるよう熱心に勧誘されたのも、今となってはいい青春の思い出だ。

 ……という話を聞くと、若い世代の皆さんの中には「そんなに昔から同じようなことをやっているのに、なぜ今日まで行政処分されていなかったのか」と不思議に思う方もいらっしゃるだろう。

 消費者庁によると、全国の消費生活センターに寄せられたアムウェイに関する苦情相談件数は19年度が317件、20年度が257件、21年度が270件、22年度も9月15日時点で109件きている。相談者の内訳は男性が約4割、女性が約6割で20代が45.1%を占めるというので、アムウェイビジネスへの勧誘に関するものもあるのだろう。

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