「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのかスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2022年10月18日 13時09分 公開
[窪田順生ITmedia]

なぜこのタイミングで?

 こういう状況が続いていたにもかかわらず、日本アムウェイが行政処分を受けたのは今回が初めてのことだ。1979年に営業開始してから週刊誌などでは、マルチレベルマーケティングの手法がたびたび叩かれたこともあるが、国からガツンとお灸を据えられたことはない。むしろ、長野オリンピックではゴールドスポンサーになったこともあるほどで、「マルチ商法界の優等生」というポジションを長くキープしていたのだ。

 そのためネットやSNSでは「なんでこのタイミング?」とザワザワしている。そのため、旧統一教会問題に結びつけるような論調も出てきている。

 ご存じのように、旧統一教会の霊感商法や高額献金がここまで問題にならなかったのは、「自民党との蜜月関係があったから」などと主張するジャーナリストや弁護士の方が多い。つまり、自民党政権が文科省や消費者庁などの役所に圧力をかけて、旧統一教会をアンタッチャブルな存在にしていたというのだ。

 自民がそこまで教団を優遇した背景には、米国の共和党への「忖度(そんたく)」もあったと指摘されている。旧統一教会はレーガン時代から共和党の有力支持団体で、あのトランプ氏も関係が深い。そこで自民党内でも特に共和党とパイプがある清和政策研究会(旧安倍派)が、信者の選挙支援と引き換えに、旧統一教会を「優遇」していたのではないか、と言われているのだ。

 このような構図が日本アムウェイにも当てはまるのではないかという指摘がある。米国本社はかなり有力な「共和党系企業」と見られているからだ。

消費者庁による行政処分について(一部、出典:アムウェイ)

 アムウェイ共同創業者の一人、リッチ・デヴォス氏は、共和党の組織を統括する全国委員会の財政長官を務めた。そして息子のディック氏もアムウェイの親会社の経営を経て、共和党からミシガン州知事選に立候補。さらにディック氏の妻、ベッツィ氏などはトランプ政権で教育長官に就任している。

 このような「米共和党と蜜月な米企業」のマルチ商法がこれまで一度も行政処分を受けなかったのは、「親米保守」を標榜する自民党が旧統一教会同様、「特例扱い」をしていたからではないかというのだ。

 しかし、旧統一教会問題が火を吹いて、宗教法人法に基づく解散請求もささやかれる中で、その「特例扱い」が許されるようなムードではなくなってきた。

 つまり、自民党が旧統一教会という「米共和党の支持団体」と縁を切る流れで、同じく「米共和党案件」であるアムウェイにもメスが入ったのではないか、というわけだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.