「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのかスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2022年10月18日 13時09分 公開
[窪田順生ITmedia]

お灸を据えた背景

 確かに、岸田文雄首相は自民党内のリベラル勢力の宏池会で、オバマ氏やバイデン大統領など米民主党と近いイメージがある。また、消費者庁長官の河野太郎氏も宏池会とルーツを同じくする麻生派で、なおかつ、アメリカ留学時代、クリントン政権の国務長官オルブライト氏のインターンを経験するなど米民主党と距離が近かった。そういう意味では、「岸田政権の米共和党へのけん制」というストーリーはそれなりに説得力もある。

 個人的にはそういう政治力学的な話もあるのかもしれないが、このタイミングで消費者庁がアムウェイにガツンとお灸を据えた背景には、近年力を入れている「ウイルス除去商法狩り」の影響も少なからずあるのではないかと思っている。

 実はコロナ禍になってから消費者庁は「新型コロナウイルスを除去できます」的なニュアンスをうたっている空気清浄機やマイナスイオン発生器、除菌グッズなどを販売している事業者を次々と吊(つる)し上げて、厳しくお灸をすえているのだ。

 その代表が、「クレベリン」でお馴染みの大幸薬品だ。「空間除菌」を掲げて、浮遊するウイルスや菌を除去できるかのような表示に対して、措置命令が下ったのは記憶に新しいだろう。

措置命令に対して、大幸薬品がコメント(出典:大幸薬品)

 消費者庁が「ウイルス除去」という言葉に敏感に反応しているのは、措置命令の件数を見ても分かる。

 2020年度における措置命令は33件あったが、その中で21件が「消毒、除菌等の効果等についての不当表示に対するもの」だった。翌21年度になると措置命令41件のうち11件と少し減るが、今年に入ってからも、ウイルスを除去できます的なことを少しでもうたう企業に厳しく臨むスタンスは継続している。

 例えば、22年2月にはイトーヨーカ堂が販売していた「ピュアサプライ」という首から下げるタイプの携帯型空気清浄機がターゲットになる。顔周辺のPM2.5、花粉、たばこの煙、細菌、ウイルス及び超微細粒子物質を含む浮遊物質を除去する効果が得られるかのように示す表示をしていたとして措置命令が下った。当初、この表示について指摘されたイトーヨーカ堂側は、第三者機関による実験結果などを消費者庁に提出したが、合理的根拠があると認められなかった。

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