「マルチ商法の優等生」アムウェイは、なぜこのタイミングで“お灸”を据えられたのかスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2022年10月18日 13時09分 公開
[窪田順生ITmedia]

不適切な勧誘行為

 もちろん、ほとんどのディストリビューターは、日本アムウェイ側の指示通りにコロナとは一切結びつけないセールストークで販売をしていはずだ。しかし、中にはこんな感じの「ぶっちゃけトーク」でアトモスフィアを売る会員もいるのではないか。

 「いや、本当のところはこの空気清浄機でコロナは除去できるんだけど、それを公に言っちゃうのは法律的にアウトなの。だから、本当はコロナの予防になるんだよね」

 アムウェイのディストリビューターはそんなにモラルが低くないと不愉快になる人もいらっしゃるだろうが、冒頭の行政処分の対象になったようなことを、アムウェイは以前から会員に対して「絶対にやらないでください」と注意喚起をしている。しかし、残念ながら一部のディストリビューターはその呼びかけを無視して、不適切な勧誘などをしてしまう。

(出典:消費者庁)

 ディストリビューターはアムウェイから商品を仕入れているだけで、自分でビジネスをしている個人だから、アムウェイ側が一人ひとりのコンプライアンスを順守しているのかなどをチェックしているわけではないのだ。そんな自由さがアムウェイビジネスの強みでもある。

 『コロナ禍で空気清浄機「アトモスフィア」が成長。コンパクトタイプの「アトモスフィアミニ」の発売で利用者層が拡大したことなどにより、「ハウスウェア」は同3.3%増の203億8100万円と好調に推移した』(日本流通産業新聞 5月22日)

 コロナ禍で空気清浄機がバカ売れしたのはどのメーカーも同じだが、アムウェイの場合、ディストリビューターたちの「セールストーク」の影響もあったのではないか。

 その中で、もし仮に筆者が心配していたような「新型コロナと結びつけた販売手法」があったとしても、消費者庁はお灸を据えにくい。アムウェイとしては「適切な予防手段ではない」と断言して、コロナと結びつけるなと注意喚起をしている。あくまでディストリビューターが自分の人間関係の中で言っているだけなので、立証が難しいのだ。

 ただ、だからと言ってこのままお目こぼしというのも消費者庁としてもスッキリしない。そこで、以前から苦情相談が寄せられていて、比較的容易に行政処分に持ち込める「マルチの勧誘」のほうでお灸を据えたのではないか。警察でいうところの「別件逮捕」だ。

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