ワークマン、さらにおしゃれに 新業態「カラーズ」で徹底研究した有名ブランドとは長浜惇之介のトレンドアンテナ(3/3 ページ)

» 2023年09月05日 10時25分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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 SHEINのリサーチを通し、ワークマンが9月1日から取り入れたのが「QR(クイックレスポンス)」と呼ぶ、トレンド商品の販売だ。

 従来、ワークマンは価格訴求のため発売の1年前に発注をかけ、工場の閑散期に安価で大量生産をしてきた。しかし、ファッション性も重視されるワークマンカラーズやワークマン女子では、トレンド商品を基にした「新たな発見」がないと、顧客の来店・購買頻度が下がってしまう。そこで、短納期かつ小ロット生産を実践するSHEINに学び、同レベルの条件でQR生産できる体制を構築した。QR生産の導入により、500着単位での発注、さらに4週間の納期で店頭に並べることが可能になった。

短納期でファッション性を高めても、機能は変わらない(同前)

 小ロット生産の商品でありながら、そのうち約8割が大量生産している商品と同レベルの価格帯に抑えたというから驚きだ。10年以上にわたって取り引きを継続している海外の主力工場が協力したことも大きい。工場としては、小ロット・短納期のQR商品が、10万着単位の量産品に化ける可能性に期待して、条件を受け入れたという。

QR商品でも値段が高いわけでない(同前)

 QR商品は主にワークマンカラーズとワークマン女子で扱う。しかし、いきなり商品構成がガラっと変わるわけではなく、全体の10〜15%ほどを目安に既存商品と併売する。

肌着・アウトドアでさらなる攻勢

 #ワークマン女子と合わせて、ワークマンカラーズでも相応の女性客を見込むことから、両店舗で女性の肌着売り場も充実させる。ファンケルから「セラミドヴェール」という化粧品に配合されている保湿成分素材の提供を受けた「保湿下着」を新提案。

新提案する「保湿下着」(同前)

 冬は肌が乾燥して痒みに悩む女性が多いことから、痒みをケアするメッセージで販売する。キャミソールが980円、8分袖ラウンドネックは1500円など、こちらも低価格に抑えた。男女合わせて1兆円あるとされる肌着市場で、5年後に5%のシェア・500億円の売り上げを目指しており、高機能の商品で攻勢をかける。

ファンケルの素材を使って、本格参入する(同前)

 アウトドア商品のさらなる拡大として、ワークマンではゴルフウェアを新展開。ワークマンカラーズでも売場が設けられた。ストレッチ性を強調して長時間の歩行を疲れにくくするだけでなく、さまざまな機能性の工夫を凝らした。クラブのスイングができやすいように腰回りをぴったりさせ、逆に肩と背中の回りはゆとりと伸縮性を持たせるなど、随所にワークマンらしさが垣間見える。

ゴルフウエアにも本格参入(同前)

 ワークマンカラーズは、これまで弱かった若者向けに、タウンユースを広げるミッションを持って開発された業態だ。SHEINをベンチマークしたQR方式による生産販売体制とともに、肌着とゴルフウエアという新たな売り場がどこまで威力を発揮するのか。今後の展開が楽しみだ。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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