試作段階の日本酒を販売して、どうなった? 「月桂冠」に反響を聞いた経済の「雑学」(3/4 ページ)

» 2023年09月06日 08時44分 公開
[小林香織ITmedia]

想定以上の反響、30〜60代に売れている

 時代にマッチした新しい日本酒の販売を通して、ブランドイメージをアップデートさせたい。ゲッケイカンスタジオが生まれた背景には、そんな狙いがあるという。

 「380年以上にわたって日本酒をつくってきた当社には、全国的に使われている酵母を開発するなど技術力で業界に貢献してきた自負があります。業界関係者には技術力の高さを評価いただいていますが、一方で消費者目線では『パックの安酒をつくっている昔ながらの会社』といった印象が強いかもしれません。

 カップ酒、パック酒の高い認知があり、70代以上の方に多く愛飲いただいているなかで、いきなりオシャレな日本酒ブランドに方向転換するのは難しい。そこで現状のイメージは残しつつ、当社の日本酒になじみが薄い30〜60代の方々に向けて、ニーズに沿った新しい日本酒を提供したいと新プロジェクトを立ち上げました」

第一弾商品は、マクアケで1週間足らずで完売する反響だった

 第一弾商品「Gekkeikan Studio no.1」は、独自酵母により香り成分を規格外まで高め、メロンのような香りと果肉を思わせる舌ざわりを実現している。応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」で先行予約販売したところ、1週間足らずで準備した本数が完売した。

 大量生産が難しいため限定的な生産数(800)ではあったが、一般発売を始めて2〜3カ月後には完売。その後に販売した「Gekkeikan Studio no.2」(生産数400)、「Gekkeikan Studio no.3」(生産数700)も同じく2〜3カ月で完売した。

 「どの製品も『日本酒じゃないみたい』と風味や舌ざわりの新しさを評価いただく声が多く、総合的に顧客満足度は高いです。ただ、甘みが強く個性が強い『no.2』は強烈に好む人がいる一方で、『食事には合わない』といった意見もありました」

桃やプラムのコンポートのような香りと複雑な味わい、とろっとした舌ざわりを持つ個性的な「no.2」は賛否両論だった

 購入者の年代は30〜60代と幅広く、30代が最も多い。男女比率でいうと、未回答を除き、男性が6割を超えている。

 「狙った層に届いている実感はあります。試作品を商品化するというテーマが、より男性に刺さりやすかったのだろうと思います」

 「no.1」「no.2」「no.3」と3商品を発売した後は、顧客からのフィードバックをもとに「no.1」を進化させた「Gekkeikan Studio no.1.1」を23年7月に発売した。

 「no.1」は約9割が「おいしい」と評価したが、「もっとメロン感がほしい」という意見もあった。そこで、酒のつくり方やアッサンブラージュ(複数の酒質を組み合わせる手法)の比率を見直し、香り成分を33%アップ、メロンの果肉感も高め「no.1.1」とした。こちらも順調に売れており、店頭では一時販売をストップしたほどだという。

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