「ここまで行くと気持ち悪い」 「渋谷をAIカメラ100台で監視」が炎上 なぜ、温度差が生まれたのか?本田雅一の時事想々(2/3 ページ)

» 2023年09月07日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

「40代/男性、同席者有り(30代/女性)、ブランドAを着用/所持、休日12時より渋谷に銀座線で到着、ヒカリエでランチ、 明治通りを通り、宮下パークへ低速で移動(ショッピング目的を想定)、月3回目(前回:休日◯曜日)・今年10回目の渋谷、ヒカリエ来店数◯回、前回店舗A・Bにて購入を実施……」(同社のスライド資料より)

photo 「渋谷100台プロジェクト」のニュースリリースより(現在は削除)

 のちに同社はこのスライド資料を削除しているが、想定する事例とは、言い換えれば導入の目的である。目的があって予算をかけるという意味では、コンソーシアム全体が彼らの提案する想定事例を是認していたことになる。

 ……と、ここでは責任を追及したいのではない。街づくりに生かしたいというのだから、コンソーシアムが想定していたシナリオは平日と休日の人流や渋谷を歩く人たちの属性変化、あるいは季節や特定日の行動パターンなどを分析し、人流に合わせた街づくり、あるいは偏った人の流れに変化をもたらすようなヒントを共有し、心地よく過ごせる街をと考えていたに違いない。

 将来的に、こうしたデータはもっとパーソナルなアシスタントにも活用され、親切に次の行動のアドバイスをくれるようになるかもしれない。しかし見方を変えるとそれは、プライベートを知り尽くした見知らぬ誰か(実際には人ではないが)のようにも感じる。

 データ活用はどのように行われているのか、一般の消費者からは見えにくい。目に見えない応用なのだから、人々はそれを頭の中で想像する。どのように受け手が感じるのかを完全にコントロールはできないが、悪意あるものではないなら、情報発信のやり方はもう少し慎重になるべきだっただろう。

 いわば「どのように見てもらえるのか」という広報やPRの視点だが、筆者はもう一つ別の視点でこの話を見ていた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.