渋谷に100台のAIカメラを設置すれば、AIの力でこんなに社会は良くなる。前進する──。思い付いたときには、きっとそんな思いを込めていたのだろう。ITベンチャーのIntelligence Designが発表した「渋谷100台プロジェクト」の話だ。渋谷駅周辺にAIカメラを設置し、人流データを取得・解析するプロジェクトだという。
ところがX(旧Twitter)で、このプロジェクトを説明するスライド資料が紹介されると否定的な反応が数多く出てきた。それらを要約すると「ここまで行くと気持ち悪い」。本来の目的とは逆の感情を呼び起こしたわけだ。
現代社会でのビッグデータ応用は、消費者があまり気付かないところで、さまざまな形で行われている。
大型店舗における顧客行動の分析は、より良い店舗レイアウトのために有益なだけではなく、利用者にとっても動線が簡素化されて使いやすくなる利点もある。地域の商圏をマルっとまとめる買い物ポイントやQRコード決済などのプロジェクトを自治体と運営し、まちづくりに反映するといったプロジェクトも、利用者にとって良い結果をもたらしてくれそうだ。
ならば、街全体をもっと細かな粒度で、複数レイヤーにわたるデータの連動性を分析できるようにすれば、もっともっと街は良くなる。アイデアや出発点は決してとっぴでもなければ、社会性に欠く企画というわけでもない。
このプロジェクトは「渋谷データコンソーシアム」の活動の一環として進められてきたものだ。このコンソーシアムも「産学一体となって渋谷をスマートシティー化するために、基礎となるビッグデータ、オープンデータ活用を進める組織」と位置付けられ、渋谷区や名だたる企業が参画している。
発表時には「ハロウィーンや年末年始のカウントダウン時といった混雑時の防犯における警備員配置の最適化や人材不足の解決に寄与することができます」と案内している。実際、そうした使い方がなされるのが本筋だろう。
では、心地よい街づくりのための開発が、なぜ「気持ち悪い」街づくりへとつながってしまうのか。プロジェクトに関わってる人たちにとっての当たり前と、街を訪れる一般の人たちが感じる当たり前には大きな違いがある。あらためて渋谷データコンソーシアムの関係者は、予備知識なしにこの情報に触れた人たちが「どう感じるか」を確認すべきだ。
Intelligence Designは、エッジAIを搭載したカメラ「IDEA」を用いたサービスを提供している。渋谷100台プロジェクトの「渋谷100台」とは、言わずもがなIDEAの台数であり、繁華街の主要エリア、施設をカバーできるよう台数を増やすことで、これまでのような単一の商業施設などではなく、街全体を最適化できると訴求するものだった。
中でも「気持ち悪い」という指摘があったのは、次のような想定事例である。
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