ところで、PCMは「NASAが開発した」という説は本当だろうか。確かにNASAは先駆けではあるらしいものの、確たる証拠は見当たらなかった。
少し落胆したものの、最近は宇宙をはじめさまざまな業界から「PCMを使いたい」という問い合わせが届いているそうだ。例えば、次のような事例をいくつか紹介してくれた。
「現在、世界で消費されているエネルギーのうち、その多くは家庭やオフィスビルの空調が占めています。フローリングの床材や壁面にPCMを内蔵すれば、冬は日中の太陽光エネルギーを蓄熱し、夏は夜間に下がった温度を蓄冷することも可能になるでしょう」(三木氏)
その他、自動車部品への応用も考えられるという。CO2の排出を抑えるための部品、キャニスターは性能を発揮するために温度を一定に保つ必要がある。キャニスターのオーバーヒートを防ぐために、PCMの活用が期待できる。
謎の存在だと思っていたPCMは、実はごく身近な材料であることが分かった。化学の特性を生かせば、どんな材料でも太陽光や昼夜の寒暖差さえ貴重なパッシブエネルギーに変えられるのだ。
年々、地球温暖化が厳しさを増す中、空調だけに頼らない手軽で安価な熱中症対策や環境対策が求められている。これからのカーボンニュートラル時代においては、ありふれた材料がアイデアと創意工夫で意外なビジネスチャンスに化けるかもしれない。
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