阪神18年ぶり“アレ”で注目 「パインアメ」製造元が社員100人で26億円稼ぐカラクリ“一本足打法”ではない!(2/2 ページ)

» 2023年09月22日 08時45分 公開
[樋口隆充ITmedia]
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夏場の売り上げ減少をカバー

 「パインアメとコラボした商品は売れる」。業界内でそんな評判が立つようになり、年々依頼が増えていった。今夏は洋菓子店を展開するクラブハリエとの「パインバーム」やファミリーマートとの「パインアメクリームパン」などの他に、パインアメを使ってシロップが作れる家電「パインアメ魔法のシロップメーカー」も発売。同社の広報担当者も「食品以外にも可能性が広がっている」と手応えを感じているようだ。

photo 「パインバーム」
photo 「パインアメ魔法のシロップメーカー」

 コラボ商品の収益の一部を「パインアメ」ブランドのライセンス料としてもらうビジネスモデルだが、同社の広報担当者によると「金額はそこまで高く設定していない」という。理由を尋ねると「コラボはあくまでパインアメの広告のような扱いのため」と回答。コラボ商品の発売で知名度が上がれば、自社商品の売り上げにもつながるという考えだ。

 認知度の向上以外にも、コラボによる恩恵はある。同社によれば、アメの最大の敵は猛暑だという。夏はアイスクリームなどの冷たい食品に消費が集中し、売り上げが落ちる。そこでシャーベットやゼリー、アイスのコラボ商品を展開することで、売り上げの低下を一定程度、抑えることができるという。コラボで相手先企業の売り上げが伸び、自社にはライセンス料が入る仕組みは双方にとってウィンウィンの関係といえる。

意外と知られていない企業向けキャンディ製造

 パインアメの知名度アップは、同社の法人向け事業にも波及している。同社は、以前から企業向けのオリジナルキャンディの生産を展開している。仲良くなった人にアメを手渡すという、関西独特の“謎文化”を活用したものだが、近年のパインアメ知名度向上で「受注は増加傾向」(同社広報)と明かす。

photo 法人向け商品も手掛けている

 企業の希望をヒアリングし、自社内の商品開発の部署が試作。味やパッケージなど了承を得た後に納品する。店舗の来客用や新商品の販促用に受注することが多いといい、例えば保険各社が契約者の勧誘用に作成依頼したり、家電メーカーが新商品の発売を記念して依頼したりするという。パインアメのように中心部に穴が空いた形状以外も対応している。

photo パインアメのような形状以外も対応可能だ

 最近ではカー用品店「カーポートマルゼン」(大阪府堺市)の依頼を受け、車のタイヤをイメージしたコーラ味のアメを製作。X(旧Twitter)の自社公式アカウント(@pain_ame)で公開したところ、話題となった。

 同社広報は「2020年に新工場を建設した。今後も本業のパインアメの売り上げ拡大を進めるとともに、コラボ商品で知名度を高めていきたい」とした。企業向けのアメ開発についても「会社の要望に応じて、さまざまな形や味を生み出せる自信がある。最近では豚骨スープ味のような変わった味のアメも企業からの依頼を受けて開発した。工場のライン数が限られるため、繁忙期は受注できない可能性もあるが、一度相談してほしい」と企業に呼び掛けている。

 各事業の詳細な売り上げ構成比などは公表していないが、取材の中でパインアメを中心に多角化経営する企業の姿が明らかになった。阪神タイガースが18年ぶりにリーグ優勝したことで関西は盛り上がっているが、球団はすでに1985年以来の日本一を目指す体制に切り替えている。球団の快進撃とともに、パインアメ事業の今後にも注目が集まりそうだ。

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