なお、懲戒処分を実施する場合には、注意すべき「7つの原則」というものがありますからご紹介します。
懲戒処分を行うにあたっては、処分の対象となる行為、処分の種類・内容を明らかにしておかねばならない。
懲戒処分の定めをする場合には、その種類および程度に関する事項を就業規則に記載しなければならないとされています(労働基準法第89条)。経営者の主観で処分を実施することは許されず、その根拠の周知が必要とされます。
事実関係の充分な調査と、本人への弁明の機会付与など、適正な手続きを踏まなければならない。
証言や先入観だけで重要な処分を決めてしまわぬよう、客観的な証拠を収集することにより、充分に調査しなければなりません。また、本人へ弁明の機会を与えるなど、公平な手続きにも留意しなければなりません。就業規則に懲罰委員会の設置などをする旨が定められていれば、その手続きも順守しなければなりません。
事案の背景や経緯、情状酌量の余地などを考慮して、必要のない処分や、重すぎる処分であってはならない。
「世間一般的にどう考えるか」という観点で、適切な処分、重すぎない処分を慎重に検討します。
例えば、遅刻を数回しただけの社員に対し懲戒解雇するのは、明らかに懲戒処分が重すぎます。このように、会社が行う懲戒処分が社員の行った行為に比べて重すぎる場合には、懲戒処分が違法になる可能性があります。
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効とする。」(労働契約法第15条)とされているため、注意が必要です。
以前に同様の事案があった場合は、当時の処分との均衡を考慮しなければならない。
成果を挙げている社員などの問題行動には目をつむり処分せずにいると、後々、他の者が同様の問題行動を起こした場合でも処分することが難しくなります。
個人の行為に対して、連帯責任を負わせることはできない。
同一の事由に対して、2回以上の処分を科すことはできない。
新たに処分の対象となる行為を定めた場合、その規定は制定後に発生した事案にのみ効力を有する。
問題が発生した後に、それを対象とした処分規定を設けても、効力を有しません。
以上、このような原則を守って懲戒処分を実施しましょう。守らない場合、懲戒処分自体が違法になることもあります。社員が会社に対して懲戒処分の取り消しや損害賠償を求める訴訟を起こす可能性も考えられますから、対応は慎重に進めてください。
大学卒業後、小売業の会社で販売、接客業に携わる。転職後、結婚を機に退職し、長い間「働く」ことから離れていたが、下の子供の幼稚園入園を機に社会保険労務士の資格を取得し社会復帰を目指す。
平成23年から4年間、千葉と神奈川で労働局雇用均等室(現在の雇用環境均等部)の指導員として勤務し、主にセクハラ、マタハラなどの相談対応業務に従事する。平成27年、社会保険労務士事務所を開業。
現在は、顧問先の労務管理について助言や指導、就業規則等規程の整備、各種関係手続を行っている。
顧問先には、女性の社長や人事労務担当者が多いのも特徴で、育児や家庭、プライベートとの両立を図りながらキャリアアップを目指す同志のような気持ちで、ご相談に乗るよう心がけている。
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