『原爆の子』『裸の島』など、海外で高い評価を得た作品を手掛けた映画監督で脚本家の新藤兼人氏は、 90歳を過ぎて受けたインタビューでこう話しています(『仕事の流儀 人の達人たちに聞く』2004年 )。
40才か50才の時に、シナリオで老人を書いてるわけ。その時の老人というのはね、盆栽に水をやっているとか、孫の頭をなでているとか、たいがい善人なんだよね。(中略)
(では、真実の老人はどうかっていうと)もう取り返しがつかない絶望感だとか、もう未来がなくなったような焦燥感だとか、あいつにやられたけど復讐をもうできないとかね、そういう妄想に かきまわされてるわけよ、老人って、悟るなんてことはできないですよ。(中略)
50や60で迷ったりしちゃいけないんじゃない? これからはじまるときなんじゃゃないですか。
やる気を失いがちな50代ではありますが、今こそ後輩たちのサポートを徹底して「自分の存在意義を強める時がきた」と考えた方がいいかもしれません。
そもそも年を取るほど、若い社員よりも能力が低く、新しいことへの適応力が劣り、仕事に取り組む意欲が乏しくなる、と思われがちですが、若いからといって仕事ができるわけでも、創造力が高いわけではありません。
これらは単なるイメージ。「無意識バイアス」です。
無意識バイアスは、本人の行動もコントロールしてしまうので、中高年のベテラン社員は、自らの能力、時にはやる気でさえ抑え込んでしまいがちです。中高年が若手に意見することを恐れ、逆に「若い人の意見には口出さない方がいい」「自分たちの時代とは違うからね」などの言葉で、自らを「非戦力」化してしまいがちです。
一方で、私がこれまでインタビューや仕事で関わった50代以上の人たちで、若手に頼られ、一目おかれる存在の人たちは、あることを共通して実践していていました。それは下の世代への「技術移転」です。
積み重ねた知識と経験がもたらす「仕事に役立つ情報」を、ときに指南役として、ときに縁の下の力持ちとして、年下の世代と共有していていました。
よくある「自慢の昔話」でもなければ、「過去の栄光」でもない。自分より年下の人が「ありがとうございます!」と言いたくなる技術移転をやっていたのです。
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