普通のカフェが2人で1万円! ニューヨークで分かった「安すぎるニッポン」の現在地激しい日米“格差”(5/6 ページ)

» 2023年10月02日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

どんどん賃上げする米国、あまり上がらない日本

 なぜ、これだけの高いランチ価格をニューヨークの人たちは支払えるのでしょうか。それはシンプルに「給料が高いから」です。完全に日米の賃金格差が出ているのです。

 ニューヨーク市で、雇用労働者の最低賃金は15ドルです。地域や職種によってかなりばらつきがあるため、実際は15〜20ドル程度の幅があると考えるのが現実的でしょう。最近では、低賃金とされてきたギグワーカーでも“賃上げ”が見られます。労働政策研究・研究機構によると、ニューヨーク市では、フードデリバリー従事者の最低賃金を全米で初めて設定したそうです。

ニューヨーク市公式Webサイトの情報を基に作成

 個人請負労働者であるため報酬が低く、安定しないといわれていたところにメスを入れた形です。23年7月から、17.96ドルがギグワーカーの最低報酬として設定されました。日本円で約2604円です。24年以降も引き上げが決まっています。報道によると、事業者側の反発により、7月末時点で最低賃金規則の施行差し止めが認められましたが、9月末にニューヨーク州最高裁判所がこの請求を棄却したようです。

 今後、仮にこの規則が施行されれば、ニューヨークのギグワーカーは1日10時間(待機時間4時間)働けば179.6ドルを稼げます。週5日・月に20日間働けば、1カ月で3592ドル。年間では約4万3000ドル≒625万円の稼ぎです。ここから労災や社会保険などは引かれますが、チップなどをもらえば、年収5万ドル以上≒700万以上を稼ぐことも可能でしょう。

 なお、最低賃金の引き上げは全米各地で起こっています。労働政策研究・研修機構のデータを掲載します。

 例えば、ロサンゼルスでは、客室60室以上のホテルで働く従業員の時給は19.73ドル≒2860円です。まさに米国は賃金の引き上げが精力的に行われており、収入が伸びているからこそ、高い飲食代金でも支払えるのです。

 一方、日本でも23年7月に厚生労働省の審議会で、最低賃金の引き上げ目安がとりまとめられました。全国平均が初めて1000円を超え、1002円となりました。東京では23年10月から1113円、神奈川でも1112円と1100円のラインを超えています。一方で、1000円を超えた都道府県は8つのみ。9位の静岡は984円と、1000円に届いていません。日本のデリバリー事業者で働くギグワーカーの東京における時給は平均して1500〜1600円です。ドル換算で10〜11ドル程度です。米国との大きな差を感じます。

中央最低賃金審議会資料を基に筆者が作成

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