需要が少ないときは価格を安くして、需要の多いときは高くする――。そんな「価格変動制」(ダイナミックプライシング)が着々と広まっている。
まず、もはや常識になりつつあるのがイベントやテーマパークだ。プロ野球やJリーグ、東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオ・ジャパンなどは以前から導入されているが、ここにきてなんと徳島の「阿波踊り」にまで導入されるという。全国から多くの人が訪れる初日を除き、公演によっては空席が目立つこともあり、客の入りが少ないことが見込まれる場合、価格を下げて足を運んでもらいやすくするそうだ。
交通機関でも始まっている。今年5月には国土交通省がタクシー運賃で導入。現在、鉄道などの公共交通機関での導入も検討されており、“日本名物”である殺人的満員電車の解消につながるのではと期待されている。
一方、今後急速に広まっていくと思われるのが「外食」だ。日本マクドナルドが東京、愛知、大阪などで「都心店」と「準都心店」を設定し、これらの店で一部商品を10円から90円値上げをしたのだ。例えば「ビッグマック」の価格は通常の店では450円だが、準都心店では470円、都心店になると500円と50円も高くなる。
ご存じのように、日本の産業界は基本的に「横並び」が好きで、業界最大手をベンチマークにしている会社が多い。つまり、マックがこういう動きをすれば当然、競合も追随するし、大手のファミレスや居酒屋チェーンなどにも広がっていく可能性が高い。
ただ、そんな「価格変動ブーム」ともいうべき動きを警戒している人は多い。「ダイナミックなんちゃらとか言って結局はステルス値上げだろ!」と怒っている人も少なくない。また、公共交通機関に導入されることで「公共サービスが利益を追及して弱者を切り捨てするとは何事だ!」と憤りを感じている人もいらっしゃる。
お気持ちは痛いほど分かる。ただ、悪いことばかりではない。価格変動というカルチャーが社会に普及していけば、多くの日本人を苦しめている「安いニッポン」という問題も多少なりとも解消していくかもしれないのだ。
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