アメリカのスタバ時給1900円から考える「安い日本」専門家のイロメガネ(1/5 ページ)

» 2021年10月31日 07時00分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

 先日、コーヒーチェーンを展開する米スターバックスが、米国で時間給社員の平均賃金を来夏に平均17ドル、現在の為替レートで約1900円まで引き上げると報じられた。労働市場のひっ迫を受けた人材の確保と引き留めが理由だという。

時給を1900円に引き上げる米スターバックス(写真提供:ゲッティイメージズ)

 国内で「安い日本」が議論になっている状況と比べると雲泥の差だが、「安い日本」論争のきっかけは岸田新総理の政策だろう。

 9月末に自民党の総裁選を制した岸田氏は、総理大臣へ就任した。新総理の掲げた政策が「成長より分配」だ。コロナ禍による経済的なダメージを考慮してか、賃上げ重視の政策を掲げたものの多数の批判を受けた。結局は「分配のためにはまず成長が必要」と早々と持論をひっこめた。

 同じく岸田総理の掲げていた「令和版所得倍増計画」も、山際大志郎・経済再生担当相が「文字通り2倍を目指すわけではない」と報道各社のインタビューで答えている。萩生田光一経産相も非現実的と指摘するなど、身内からも批判が出ている始末だ。

 成長より分配の目玉のように掲げられていた金融所得の課税も、株価下落を受けていったんは取り下げた。出だしからボロボロの岸田内閣だが、いずれも所得と再分配に関わる話だ。そしてコロナ禍で経済がボロボロになった現在、政策の可否は別にしても所得と再分配の議論が重要であることは間違いない。

 そこで「安い日本」と所得の関係を雇用リスクから考えてみたい。

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