岸田総理が「成長より分配」が強く批判されてひっこめざるを得なかった理由は、「安い日本」を改善するためには経済成長が必須であると多くの人が考えていたからだろう。
まず、日米中のGDPの推移をグラフで見てみよう。2010年に日本が中国に追い抜かれてから10年、改めて推移を見ると、停滞する日本に比べ米中の成長は驚異的ともいえる。
日本はバブル期から横ばいに近い状況が続いており、失われた10年が20年、そして30年へと延長してしまったことが一目で分かる。加えて、新興国で人口が世界一多い中国の急激な成長はまだ納得できるとして、先進国で1位の米国もまた成長が続いている。
小さい新興国の成長と米国のような大国の成長は同じパーセントであってもまったく意味が異なる。所得水準も1人当たりのGDPもまだ低い中国に成長余力があることは当然だが、すでに先進国の米国がここまで急激な成長を遂げていることは驚異的だ。それが所得水準にもダイレクトに現れており、スタバの時給1900円につながっている。
一方、日本でも少子高齢化によって人手不足は深刻な状況にあるが、賃金水準は30年前から横ばいだ。とはいえ、これは経営者がケチだとか、値上げを消費者が嫌がるとか、そういった個人や企業の特性、気分の問題だけに帰結するような話ではない。
米国の企業であっても、経営者は人件費を低く抑えたいと考えるのは自然で、消費者も安く買い物ができるのならそれに越したことはない。賃金の上がらない根本的な構造が日本にあると考える方がよっぽど自然だ。
では構造的な問題とは一体何なのか? それが「雇用リスク」だ。
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