アメリカのスタバ時給1900円から考える「安い日本」専門家のイロメガネ(5/5 ページ)

» 2021年10月31日 07時00分 公開
[中嶋よしふみITmedia]
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今後は「安い日本」ではいられない

 日本は賃金も物価も他国より安い、というのが「安い日本」の議論で語られることだが、物価が安いなら賃金が低くても平気なのか。

 この記事を書いている時点でも、吉野家が牛丼を値上げ、カルビーがポテトチップスを値上げ、日清が小麦製品を値上げ、味の素が冷凍食品を値上げ、と値上げに関するニュースが多数報じられている。電気料金も各社が12月に値上がりを発表しており、原油や天然ガスの値上がりが理由とされている。

吉野家は、牛丼並盛りを387円から426円に値上げした(同社Webサイトより)

 日本は食料の半分を、エネルギーの大半を輸入に頼っている。現在の傾向が続けば賃金は低く物価は高い状況、つまり「安い日本」から「貧乏な日本」になってしまう日も近い。

 分配はパイの切り分け方であって、パイが小さければどのように分配しようと貧乏である。金持ちがさらに金持ちになれば貧乏人も豊かになる、というトリクルダウン理論は否定されたが、それはかつて英国の首相だったサッチャーが指摘したように、金持ちを貧乏にすれば貧乏人が金持ちになれることは意味しない。

 岸田総理は10月、政策実現のために「新しい資本主義実現会議」という有識者会議を設置した。

 平等に貧しくなろう、といった話が話題になったこともあるが、それで真っ先に困るのは賃金が低く資産もない貧しい人だ。この会議では経済成長が賃金上昇につながる、そのためにはどうしたら良いのか、そんな議論を期待したい。

執筆者 中嶋よしふみ

保険を売らず有料相談を提供するファイナンシャルプランナー。住宅を中心に保険・投資・家計のトータルレッスンを提供。対面で行う共働き夫婦向けのアドバイスを得意とする。「損得よりリスク」が口癖。日経DUAL、東洋経済等で執筆。雑誌、新聞、テレビの取材等も多数。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」。マネー・ビジネス・経済の専門家が集うメディア、シェアーズカフェ・オンライン編集長も務める。お金より料理が好きな79年生まれ。

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