いろいろなご意見があるだろうが、個人的には「全国どこでも同じ安い価格」という社会システムを実現するために、人間が犠牲になっているようにも見えなくはない。よく言われることだが、日本の「ものづくり」を支える工場では、不景気などで生産量を減らせば、派遣労働者など非正規雇用を切る。製品を安定供給するために「ヒト」を調整弁にしているのだ。
常軌を逸した「低価格・高品質」をキープするために、弱い立場の人たちが低賃金を強いられる、という安いニッポンも根っこは同じだ。
価格変動制が導入されることでさまざまなメリットやデメリットが指摘されている。ただ、個人的には実は最も大きなメリットは、日本人の「安くて質のいいものを世の中に提供するには、労働者が犠牲にならなくてはいけない」という価値観を変えられるかもしれないということだと思っている。
今回の動きを契機に、われわれはもう一度、「モノの価格」と「ヒトの価格」というものをあらためてしっかりと考えなおすべきではないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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