“安いニッポン”の救世主になるのか 「価格変動制」はわれわれの心も変えるスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2023年07月25日 11時11分 公開
[窪田順生ITmedia]

「ヒトの価格」に価格変動性が導入

 実はあまり言われないが、日本でもこれまである分野で価格変動が導入されていた。もうお分かりだろう、「労働者」だ。

 海外、特に欧州の先進国では最低賃金が「全国一律」で定められている国が多い。しかし、日本では都道府県で最低賃金はバラバラだ。コンビニのおにぎりの価格は東京と沖縄も同じだが、そこで働いているバイトの時給には大きな格差がある。

 「そんなの当たり前だろ」と思うかもしれないが、これは冷静に考えるとおかしなことではないか。本来、東京の労働者も、沖縄の労働者も能力や仕事量にそれほど大きな差はない。しかも、光熱費や税金なども社会的コストもそれほど変わらない。

「ヒトの価格」に価格変動性が導入され……(出典:ゲッティイメージズ)

 生み出す価値も、かかるコストも変わらないのに、住んでいる場所の需要の多さ少なさだけで、価格に差をつけられている。となると「ヒトにダイナミックプライシングを導入した」と言ってもいい。

 そして、われわれがここで注目しなくてはいけないのは、なぜ日本では「モノの価格」よりも先に「ヒトの価格」に価格変動性が導入されてしまったのかということだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.