従業員がいつ年次有給休暇を使用できるかについては、労働基準法で以下のように定められています。
労働基準法 第三十九条
5. 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。
ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
前段にある通り、年次有給休暇は理由を問わず、従業員が使いたい日に与える必要があります。使用する理由を確認して、その内容によっては認めないという運用はもちろん、勝手な使用日数の制限は違法です。
一方で、後段の記述の通り単純に年次有給休暇の使用を拒否することはできませんが、事業の正常な運営を妨げる場合には、その日を変えることができ、これを時季変更権といいます。ただ、この「事業の正常な運営を妨げる」が、どのレベルを意味するのかの判断は難しいところです。実際に裁判に発展した例を見てみましょう。
東京高等裁判所判決 平成13年11月28日
裁判所は、以下の理由からXが訓練を受講すべきという前提に立ちました。
「…訓練への参加は、職場の代表者として取得した知識、技能を職場に持ち帰ることをも目的とするが、直接的には参加を指名された当該職員の知識及び技能の増進、向上を目的とするものであるから…訓練への参加の一部を他の職員をもって代替することは、訓練の趣旨に反することになるので許されず、その意味において、訓練への参加は、非代替的な業務であるということができる。」
そして、以下のような理由で違法性はないと判断し、Xの主張を退けました。
「…他の手段によって欠席した訓練の内容を補い、当該訓練の所期の目的を達成することのできるなど特段の事情がない限り、時季変更権を行使することが許されるものと解するのが相当である。」
ただ時期変更権の行使について、二審はXの主張を認め違法と判断しており、明確な線引きが極めて難しいと言わざるを得ません。
表題の「重要な会議の日にいつも有給休暇を申請してくる部下、断れる?」についても、誰かが代理参加することで当初の目的を達成できるか、また代理参加が不可能でも先に資料を提出するなど他の手段で補えるかという視点で判断することになります。
ただ、毎回年次有給休暇の申請があるということは、会議自体に根本的な問題がある可能性も考えられます。会議自体の見直しに着手することが現実的かつ得策でしょう。
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