消えた「和民」が鳴り物入りで大復活 ワタミが本気で仕掛ける新ブランドは、何がすごいのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)

» 2023年10月18日 05時30分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

今や居酒屋が絶好調のワタミ

 ワタミが焼肉の和民・1号店を東京都大田区に出店した20年10月は、換気が良いイメージから、外食の中で焼肉が比較的好調だった。そこで、居酒屋業態の看板としてきた和民をはじめ、居酒屋として出店していた店舗を順次、焼肉の和民へと転換。不採算店の閉鎖を進めた。当時は、居酒屋業態に代わる今後の主幹事業と位置付けるとも宣言していた。

今回復活した和民で提供する「唐変木のモダン焼き」

 ところが、直近では「ミライザカ」「三代目鳥メロ」といった居酒屋業態が急回復しており、焼肉業態へと転換する必要がなくなったことから、戦略を変更。今後、焼肉業態の出店は、郊外に展開するブランド・かみむら牧場に注力する。駅前立地は焼肉の和民ではなく、和民のこだわりのれん街を含め、居酒屋を拡大していく方針だ。

 追い風も吹いている。コロナ禍でワタミも含めて居酒屋の閉店が相次ぎ、宴会ができるような場所が減少した。そのため、相対的に残っているワタミの店舗にニーズが集中する傾向も出ている。ワタミの居酒屋業態における直近3カ月の既存店宴会売上高は、19年対比で23年7月が138.3%。8月が105.9%、9月も111.1%と、いずれもコロナ前の19年を上回っている。居酒屋の既存店インバウンド売上高も、19年対比で、23年7月が51.1%、8月が72.8%、同年9月が120.0%と急速に伸びて、9月にはついに19年を大きく上回った。

季節の和民サラダなど、自社農園の野菜もふんだんに活用する

 各種調査で、訪日外国人が日本で行きたい飲食店の上位に居酒屋がランクしている。特に総合居酒屋では刺身・焼鳥・鍋料理など、代表的な和食メニューが1店舗でそろい、お酒も楽しめることから人気を博す。和民のこだわりのれん街では、従来の総合居酒屋ではあまり一般的でなかった、寿司、焼肉といった外国人に人気の和食も、主力のメニューに組み込んでいる。

海外事業も反転攻勢に

 海外事業も反転攻勢を仕掛ける。ワタミの海外店舗は、香港・中国・台湾・シンガポール・フィリピンなどアジア諸国に展開。14年に100店を突破したが、コロナ禍の影響もあり、23年3月末には50店にまで激減していた。今期は65店まで増やす予定で、出店を再開する。

 特にフィリピンで12年からフランチャイズ(FC)展開している和民で、コロナ前と比較して既存店売上が120%と好調。直近1年で11店から16店まで増えた。ワタミではフィリピンの店舗が全店好調なので、海外モデル店として、タイ、シンガポールなど東南アジア諸国に横展開する計画を進めている。韓国は、日韓関係の悪化とコロナで2度撤退したが、5月、ソウルに三度目のチャレンジとして「わたみ(和民)」を出店した。FCパートナーは、ワタミが日本でチェーン展開しているフライドチキン専門店「bb.qオリーブチキンカフェ」運営会社のジェネシスBBQで、100店を目指すという。そこまで強気になれるのは、韓国が現在、空前の和食ブームだからだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.