消えた「和民」が鳴り物入りで大復活 ワタミが本気で仕掛ける新ブランドは、何がすごいのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)

» 2023年10月18日 05時30分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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「ワタミモデル」とSDGsに向けたさまざまな取り組みも

 和民のこだわりのれん街は、循環型6次産業「ワタミモデル」の確立に向けた、SDGsモデル店舗にもなっている。自社農場で採れたオーガニック野菜を、居食屋 和民で「季節の和民サラダ」(548円)、ゴジピタパーラーの「濃厚オーガニックトマトジュース」(495円)などで提供する。

 北海道 美幌峠牧場では、297ヘクタールの自社牧場で放牧された、牧草だけを食べて育った乳牛から取れるグラスフェッドミルクを使った商品を提供。「グラスフェッドミルクアイス」(438円)は、ワタミの店舗だからこそ味わえる商品となっている。

美幌峠牧場として提供するグラスフェッドアイス
美幌峠牧場ではオーガニックトマトジュースを使ったピザも販売

 その他、カミチクと取り組む持続可能な畜産や、養殖に持続可能な海洋資源を利用するなど、サステナブルな食体験にこだわる姿勢を見せる。

 10月26日に開始するランチ営業でも、ワタミファームで栽培した国産有機ソバの実を使ったメニューを提供。トレイにも間伐材を使用する。ワタミとして本格的なソバ業態に挑むのは、初となる。

 エネルギー面でも、秋田県にかほ市にあるワタミ所有の風車「風民(ふーみん)」で発電したFIT電気(再生可能エネルギー電気)を、非化石証書と紐づけ。100%再生可能エネルギーで店舗の使用電力をまかなう。

 食品ロス削減のため、食品廃棄物の分別と計量も実施する。廃棄の原因を特定して総量を削減する対策を打つ。それでも排出せざるを得ない廃棄物は、リサイクル業者を通じ、配合飼料原料として再資源化する。今後は再資源化した飼料で生産した農畜産物を、店舗の食材として使い、食品リサイクル・ループの完成を目指す。

記者会見に臨む渡邉美樹会長兼社長

 このように、和民のこだわりのれん街ではさまざまな取り組みがなされている。専門業態の集積としての総合性、さらには少人数の居酒屋需要だけでなく宴会需要も狙い、インバウンドも開拓。また、インフレに対応する値上げと給料アップを可能にする付加価値の追求、有機農業者としてのアピールと有機農産物の拡販も目的だ。はたまた、サステナブルな循環型6次産業モデルなど、社会的にも重要なテーマを内包している。

 今後は全国の主要都市に同様のモデルを展開していくが、まずは集客を上げていく必要がある。大井町に1号店を出店した理由について、渡邉氏は「ビジネス街と住宅街が混じり合っている場所だから」と話すが、インバウンドの観光客はあまり来ない立地でもある。今後はインバウンド需要も見込める、東京ならば浅草・渋谷・新宿、大阪ならミナミ、京都では四条河原町あたりに旗艦店を出して、満席になるまでブラッシュアップしてもらいたいものだ。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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