なぜガソリンの価格は分かりにくいのか 値引きの仕組みが複雑な理由高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

» 2023年10月20日 08時30分 公開
[高根英幸ITmedia]

価格を提示していないGSの特徴

 価格を提示していないGSには、一定の法則がある。新しくなく、セルフ給油方式ではないことだ。価格を表示していないところの多くがフルサービス、つまり店員が給油して窓拭きなどのサービスを行ってくれるスタイルの店舗だ。セルフ給油のスタンドはコストを重視していて、安さを強調して薄利多売を目的としているから、価格を表示するのだ。

 また価格を提示していても、現金価格と会員価格では差があり、その2種類が別の看板で提示されていることが多い。遠くからも見える大きな看板は現金価格であり、会員価格は小さな看板でより安い価格を表示しているのが一般的だ。

価格を提示していないGSも(提供:ゲッティイメージズ)

 従来、大きな外看板には現金価格を表示して、敷地内の小さな看板により割引された会員価格を表示していたが、外看板に会員価格を大きく表示して、安い印象を与えるスタンドもある。価格を見て「安い」と思って給油してみると、実際には店舗内に小さく表示された高いほうが現金価格で、それほど安くはなかったというパターンだ。

 これでは誤解が生じるので問題なのでは? と思い、利用したときに店員に尋ねたことがある。すると元売りブランドの看板の下には、ICチップ内臓のスマートキーのロゴが表示されており、それを利用した場合の価格なので問題はない、という返答だった。

 これはドライブ中にたまたま訪れたようなドライバーなら仕方がないと思うかもしれないが、リピーターとなる地元客に対してはマイナスとなる行為だ。何だかだまされたという気になれば、二度と利用したくないと思うのが普通だろう。

 その店の価格の“カラクリ”を知っている地元客よりも、すぐに給油できることを重視しているドライバーが利用すればいいということなのだろうか。その場所にとどまって長くビジネスを続けるためには、周辺地域から信用されなければいけないが、最近では異なるスタイルが出てきたのかもしれない。

 この記事を書くにあたり再び確認してみると、いつのまにかそのGSも従来の表示方式に戻されていた。ユーザーから直接または元売りに苦情が入って、是正したと思われる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.