「はま寿司」に続き「スシロー」も“デジタル回転寿司” DX専門家に聞く業界の行方長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/4 ページ)

» 2023年10月31日 10時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 回転寿司以外の外食でも、牛丼店でテーブル上の容器から紅生姜を直接かき込む動画や、ラーメン店で割り箸を口に入れてから元の容器に戻す動画など、さまざまな業種の店内でなされた迷惑行為がSNSで拡散・炎上した。動画をアップロードした若者たちには、外食の文化を破壊する行為だと、社会的な非難が集まった。被害を受けた多くの外食各社は、警察に被害届を提出して裁判に訴えた。法の裁きを受ける以前に、SNSから加害者の実名や通っている学校名などがさらされ、退学を余儀なくされるケースもあった。

 その後は外食、特に回転寿司を応援したいといった機運が高まり、顧客の激減に見舞われたチェーンを今まで利用していなかった層が訪れて売り上げが回復するという、顧客層の入れ替えが起こった。「外食文化を守りたい」と考えて行動に移す人は、少なくないようだ。

くら寿司を除き「脱・回転」化

 現状は悪質な動画の投稿などは沈静化しているが、一連の騒動以降、回転寿司各社ではどうすればいたずらを防げるのか、再犯防止策が取られるようになった。

 まず、スシローではレーンと席の間にアクリル板を設置することで、悪質な行為をしにくくした。さらに、くら寿司を除く大手チェーンでは、回転レーンを止めて、タブレットでオーダーされた注文品のみを流すようになった。もともと元気寿司が運営する「魚べい」はタブレットで注文が入ってから握り、高速レーンで席まで届けるフルオーダー式を売りにしていた。この回転“しない”寿司が、回転レーンよりも安全性が高いと判断されたようだ。

 コロナ禍の少し前から、はま寿司と「かっぱ寿司」でも回転“しない”寿司形式の店を実験しており、徐々に店舗を拡大していたこともあって、この流れが加速した。はま寿司では「フードロスが出にくいのがストレートレーンの良さ」(同社・広報)と、フードロス削減を第一の導入理由に挙げていたが、一連の迷惑動画が間違いなく影響しているはずだ。

 唯一回転レーンを維持したくら寿司では、元々「抗菌寿司カバー」と呼ぶ、鮮度を長時間保つために開発した透明なドーム状のカバーに寿司皿を入れて回していた。寿司が外気に晒されないため、顧客の会話などで飛沫(ひまつ)が寿司に付着するのも防止できる。

 ただし、一度取った寿司をカバー内に戻すいたずら行為までは想定していなかった。そこで、新たに監視カメラを設置。悪質な行為が発覚した際は当該顧客に声掛けし、場合によっては警察に通報するシステムを整備した。

 卓上のしょうゆ差しやガリは、いたずらに対する社会的制裁が厳しいこともあり、元に戻しているケースが多いが、ワサビと同じく小袋に分けて提供する店もある。スシローでは、テーブルの真ん中に箸入れと共に全部集めて、従業員の目が届きやすいように配置している。

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