「はま寿司」に続き「スシロー」も“デジタル回転寿司” DX専門家に聞く業界の行方長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/4 ページ)

» 2023年10月31日 10時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

回転寿司ならではの楽しみを、どう超えるか

 話をスシロー・はま寿司の取り組みに戻そう。両社が一部店舗で導入したデジタル回転寿司は、こうした悪質行為の防止策の一環として提案されたものだった。

 デジローの仕組みは次のようなものだ。店舗の各テーブル席に設置している大型のデジタルビジョン上で、寿司の画像が流れ、ゲームもできる。はま寿司のレーンオーダーは、タブレット型タッチパネルより、縦の長さを半分、横の幅を倍にしたようなサイズ感でコンパクト。一方のデジローは、オートウェイターの上部、向かいの席とを仕切る壁面の全面に展開されていて、非常に迫力がある。

スシローのデジタルレーン。寿司の画像にタッチすれば注文できる
本物の回転レーンに近い雰囲気がある
商品の宣伝やデカネタだけの注文画面を出すのも可能

 デジローでは、寿司など商品の画像をタッチすると、注文数などを確定する画面が表れて、簡単な操作で注文ができる。まぐろ・サーモン・巻き寿司など、カテゴリーで表示することも可能だ。2人までなら同時に注文できる便利さもある。注文した商品は、オートウェイターで運ばれてくる。寿司に関するさまざまな情報、こだわりやクイズなどもデジタルビジョンで流れるので、店に通っていると、いつの間にか寿司通になっているという楽しみもあるだろう。

 注文額に応じてできるゲームは景品もあり、景品はオートウェイターで運ばれてくる。くら寿司では皿を5枚投入すると「ビッくらポン!」が自動的にタッチパネル上で始まるが、それと似たエンターテインメント要素が、デジローでも採用された。

ゲーム画面
ゲーム画面
ゲーム画面(この後、あたりがでると景品がもらえる)

 はま寿司のレーンオーダーが注文に特化しているのに対して、盛りだくさんの機能を持つデジロー。回転寿司のメリットである、実際に現物を見て選べる楽しさ、バラエティー豊かな商品が次々とレーン上に登場する面白さを、バーチャル空間でどのように超えられるのかは未知数だ。そもそも注文してみなければ、本当はどんな商品なのか、分からない。

 こうした、実際に試してみなければ分からない点が多いからか、デジローはスシロー創業40周年の記念事業でありながら、現状は東名阪の3店で試験的に導入するにとどまる。また、これまでオートウェイターと回転レーンを併用する店舗を拡大してきたが、今後はオートウェイターのみを稼働させる店づくりを進めるという。国内約80店をオートウェイターのみの店にしていくとのことだ。つまりスシローも魚べい・はま寿司・かっぱ寿司と同様に、回転“しない”寿司となり、大手で回転レーンを維持していくのは、くら寿司のみとなる。

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