「マイクロモビリティ」が次々に登場 個性的なモデルは広まるのか高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)

» 2023年11月06日 08時00分 公開
[高根英幸ITmedia]
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日本製は品質追求で勝負できるか

 現在日本で手に入るマイクロモビリティは実に種類が豊富で、価格も品質も幅広い。また、製品の多くは中国の工場で生産されている。人件費が上昇したとはいえ、まだまだ日本でつくるより安いので、どうしても工場が中国か新興国に集中している。

 特に電動車両に関してはバッテリーの材料を中国がガッチリと握っていることもあり、調達コストで太刀打ちできない。だが電動キックボードだけで考えても、実はタイヤ外径の大きさはモデルやメーカーによっても大きな差がある。また品質の低い電動は火災の危険性も高いといったことが指摘されており、リスクも同じではない。

 中には1年足らずでボロボロになってしまう製品も珍しくない。それは各部品の強度を決定づける材料の品質や寸法精度などが日本の基準とは異なるからだ。

 日本企業が品質管理することにより、中国製でもかなりいいモノができる。むしろ最近は中国製のほうが品質が高い例すらあるほどだ。そうした意味では、日本に本社や販売代理店がある企業が品質管理をすれば、マイクロモビリティの品質は向上していくだろう。

 一方で、日本国内での生産にこだわっている企業もいくつか見受けられた。今回、部品メーカーやサプライヤーも集合したエリアで自社製品や試作品を展示していた。モーターや金属部品を手掛けている企業であれば、そのほかの部品は外部から調達することでマイクロモビリティを開発し、製品化することはできる。

こちらは別の展示会で遭遇したマイクロモビリティ。日本のパーツサプライヤーが独自に開発中のもので、温泉地で実証実験を行っており、2024年には市販予定とか。前2輪のステア機構も凝ったものだが、生産は中国で行う計画だ

 日本のメーカーは品質の高さを武器にして、思い切ってモーターや駆動系などに5年間の長期保証をうたうといった対応をしてはどうだろうか。SNSなどで日本製の耐久性、信頼性の高さが伝わってくれば、選ばれていくことも期待できる。

 国交省は、超小型モビリティの制度づくりに手間取り、普及の芽を摘(つ)んでしまった責任を再確認して、マイクロモビリティを正しく規制することで安全に普及させることに力を注いでほしいものだ。そうすれば連鎖的に超小型モビリティもその価値が再認識されて、普及が広がるかもしれない。

 品質と技術にアイデアがあれば、中国の生産コストに対抗できる可能性は高い。今後日本ではパーソナルモビリティや小さなモビリティが活躍する可能性が高いので、国内の産業もその需要の高まりに合わせて生産体制を構築できれば、勢いづくと思うのだ。

筆者プロフィール:高根英幸

 芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。


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