人的資本経営といっても、経営者、人事担当者、投資家など、立場によってその取り組み方、考え方は異なるものだ。本連載では、株式会社タナベコンサルティングのエグゼクティブパートナー 古田勝久氏が、それぞれの立場に立った取り組み方を解説する。
ITmedia ビジネスオンラインでは、2023年12月5〜6日に人事・総務向けオンラインイベント「HR Design Days 2023冬」を開催する。「企業成長のカギは『人』人材戦略の最適解」をテーマに、「人材育成」「組織改革術」について有識者や実践企業の担当者が講演する予定だ。
本記事では、同イベントに登壇するタナベコンサルティング エグゼクティブパートナー 古田勝久氏に、人的資本経営成功に向けた“戦略人事”のノウハウについて解説してもらった。
近年、人材を資本と捉え、経営の中心に据えて考える「人的資本経営」という言葉が広まりつつある。これまで人材は、経営“資源”として捉えられ、人件費はコストとして考えられてきた。一方で、人的資本は企業成長の源泉であり、投資することで企業成長につなげることを目指す経営が人的資本経営なのである。
そもそも「人的資本」とは何を指すのだろうか。資本という言葉は、自己資本(純資産)や他人資本(負債)などのように、通常は貸借対照表の貸方の科目として使われる。つまり、事業運営に必要な資金の調達を意味する言葉でもある。
一般的に経営とは、調達した資本を投資・運用している状態を資産として貸借対照表の借方に記載し、それらを使ってビジネスを行い、損益を計算し(損益計算書)、投資回収を行うことである。そのようにして創業以来積み上げた利益が、自己資本(純資産)となっていく。
この考えを人的資本経営に置き換えてみたらどうか。調達(採用、育成)した人的資本を投資して事業を展開し、財務や非財務のリターンを得る。またそのリターンを再投資して企業価値を高めていくことと言える。まさに、投資と回収である。
では、人的資本への投資、運用(貸借対照表の借方=資産にあたる部分)は何か。それは人的資本が生み出す組織力やイノベーション、ブランド力といった無形資産である。それらが企業価値の向上に貢献してこそ、はじめて人的資本経営と言えるのであって、人的資本の情報開示に翻弄されることが本質ではないのだ。
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