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「人材を確保できないのは、求める要件が高いから」 じゃあ企業は何をすべき? 担当者が今すぐ考えるべき基本の“き”会社全体で考える「人的資本」(2/2 ページ)

» 2023年11月16日 07時00分 公開
[古田勝久ITmedia]
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企業側の希望を満たす人材はもはや存在しない?

 ここからは、資本の調達について具体的に解説していきたい。人的資本の調達方法は、採用と育成の2つしかない。

 採用はイメージしやすいだろう。外部から必要な人材を調達(採用)して資本として加えていくことである。これに対して育成は、すでに企業が保有している資本(人材)に対して投資(研修や教育)を行い、スキルセットしていくことだ。

 採用や育成がともに大事なのは言うまでもないが、それぞれ別々の人事施策として捉えるのではなく、採用→育成→活躍→定着という一連の流れの中で考えていくことが重要だ。

 さまざまな企業の採用担当者と話す中でよく聞く課題が、新卒、中途問わず「母集団が形成できない」という点だ。その理由として、少子高齢化による労働人口の減少や、働き手の価値観の変化(個への対応)などが挙げられる。

 この課題を聞いて筆者が思うのは「企業側も、求職者に求める要件が厳しいのではないか」ということだ。残業ができて、異動や転勤にも文句を言わず、幹部を目指す素養があって、デジタルにも強くて、即戦力となる――。このような人材は果たしてどこにいるのだろうか? 企業側が望む全ての条件を満たす人材は、もう存在しないのかもしれない。

人的資本 企業側が求職者に求める要件が厳しいのではないか(画像提供:ゲッティイメージズ)

 高度経済成長期のように、経済が右肩上がりで終身雇用の時代であれば、求職者や従業員はこの条件と引き換えに、会社が一生面倒を見てくれるという構図が成り立っていた。しかし、終身雇用は過去のものとなり、個人が自身の成長を求めて働く場を流動的に選択できるようになった今、求職者へ要求するハードルを見直すことなく、母集団形成を数だけで追いかけるようでは、人的資本の調達(採用)は決してうまくいかないだろう。

 優秀な人的資本を調達するためには企業側の改革が重要と言える。多様な働き方を実現し、これまでの労働条件では採用できなかった人材へアプローチする。ポテンシャル(潜在能力)を持った人材を“活躍人材”へと成長させる体制を整備し、採用の門戸をより広くする(人的資本を調達するマーケットを広げる)ことを検討してほしい。人材の多様性が生まれることで社内イノベーションが期待でき、人的資本経営の実現に一歩近づけるのである。

 ここまで人的資本の調達について考えてきた。具体的な「採用→育成→活躍→定着」の流れを成功に導くヒントは、次回の連載で紹介したい。

人的資本

著者プロフィール

古田勝久(株式会社タナベコンサルティング エグゼクティブパートナー)

自動車部品メーカー、食品メーカーの人事部門にて採用・人材育成・人事労務業務を経て、タナベコンサルティングへ入社。

現場で培ったノウハウをもとに、戦略的な人事・組織の実現に向けて経営的視点からアプローチし、大企業・中堅企業の成長を数多く支援している。

タナベコンサルティンググループ(TCG)について

 TCGは、1957年(昭和32年)に創業し、創業60年を超える日本の経営コンサルティングのパイオニア。「企業を愛し、企業とともに歩み、企業繁栄に奉仕する」という経営理念のもと、グループで約660人のプロフェッショナル人材を擁し、「経営者・リーダーのパートナー」として大企業から中堅企業まで17,000社以上の支援実績を持つ。

 経営コンサルティング領域としては、戦略策定支援(上流工程)から、デジタル技術も駆使した現場における実装・オペレーション支援(中流〜下流工程)まで、企業経営を一気通貫で支援できる経営コンサルティング・バリューチェーンを全国地域密着で構築している。


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