家庭用の売り上げが5倍に! カプセル式コーヒーマシン「キューリグ」の強みと弱み約4年ぶりに新作(2/4 ページ)

» 2023年11月16日 08時30分 公開
[小林香織ITmedia]

家庭用の売り上げが3年で5倍に

 挽き立てのコーヒーを1杯分ずつ真空密封することで、新鮮な香りや味わいを楽しめるのがカプセル式コーヒーの特徴だ。日本での普及率は低いが、欧米ではレギュラーコーヒー消費量の40〜70%を占めるほど浸透しているという。

キューリグのカプセル「K-CupR」は窒素を充てんして密閉することで、豆や茶葉の酸化を防ぐ(筆者撮影)

 キューリグの日本上陸は2001年にさかのぼる。米国のキューリグ社とUCC上島珈琲社の合弁会社であるキューリグFE社で経営をスタートした。しばらく業務用マシンのみを展開していたが、06年に家庭用の販売も開始した。

 同社のマシンはドリップ方式を採用している。一方、業界大手ネスレのカプセル式コーヒーマシン「ネスカフェ ドルチェ グスト」は、ハンドドリップ機能付きの機種もあるが、ベースとしてエスプレッソ方式を採用している。

キューリグの事業を展開するカップス社の西本圭吾社長(筆者撮影)

 西本氏は「エスプレッソは苦味が強調された濃い味わいが特徴だが、ドリップ方式は苦味の度合いを変えられる。日本にはドリップコーヒーから始まった喫茶店の文化があるので、ドリップがなじんでいると思う」と話す。

 例えば、コンビニ各社のコーヒーマシンは、セブン-イレブンとファミリマートがドリップ方式だ。第3の波として流行している「サードウェーブコーヒー」も、主に浅煎りの豆を使って一杯ずつ丁寧にハンドドリップする。

ドリップ方式を採用しているキューリグのマシン。左が新モデル「KB-01」、右が現行モデル「BS300」(筆者撮影)

 日本人になじみのあるドリップ方式を採用したマシンではあるが、キューリグの家庭用の市場開拓は難航した。そこで19年に方針転換を図る。UCCグループのユニカフェ社にキューリグ事業を移管して、マルチブランド化に着手した。20年にキューリグ事業を運営する会社としてカップス社を設立すると、一気にマルチブランド化が進んだ。

 今では20以上のブランドとコラボし、40種類以上のカプセルを展開する。これが功を奏して、20年から22年の3年間で家庭用マシンの売り上げが約5倍に成長。業務用と家庭用の売上比率は同等になった。ブランドのラインアップの幅広さは、同社ならではの強みだ。

 例えば、ネスカフェ ドルチェ グストは、自社商品の他にグローバルライセンス契約を締結しているスターバックスのカプセルも扱うが、それでも30種類ほど。他のコーヒーブランドとは折り合いが悪いのか、それらを扱えないようだ。

 その点、UCCの名前を捨てて新会社を設立したキューリグは、マルチブランド化を実現できたという。

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