挽き立てのコーヒーを1杯分ずつ真空密封することで、新鮮な香りや味わいを楽しめるのがカプセル式コーヒーの特徴だ。日本での普及率は低いが、欧米ではレギュラーコーヒー消費量の40〜70%を占めるほど浸透しているという。
キューリグの日本上陸は2001年にさかのぼる。米国のキューリグ社とUCC上島珈琲社の合弁会社であるキューリグFE社で経営をスタートした。しばらく業務用マシンのみを展開していたが、06年に家庭用の販売も開始した。
同社のマシンはドリップ方式を採用している。一方、業界大手ネスレのカプセル式コーヒーマシン「ネスカフェ ドルチェ グスト」は、ハンドドリップ機能付きの機種もあるが、ベースとしてエスプレッソ方式を採用している。
西本氏は「エスプレッソは苦味が強調された濃い味わいが特徴だが、ドリップ方式は苦味の度合いを変えられる。日本にはドリップコーヒーから始まった喫茶店の文化があるので、ドリップがなじんでいると思う」と話す。
例えば、コンビニ各社のコーヒーマシンは、セブン-イレブンとファミリマートがドリップ方式だ。第3の波として流行している「サードウェーブコーヒー」も、主に浅煎りの豆を使って一杯ずつ丁寧にハンドドリップする。
日本人になじみのあるドリップ方式を採用したマシンではあるが、キューリグの家庭用の市場開拓は難航した。そこで19年に方針転換を図る。UCCグループのユニカフェ社にキューリグ事業を移管して、マルチブランド化に着手した。20年にキューリグ事業を運営する会社としてカップス社を設立すると、一気にマルチブランド化が進んだ。
今では20以上のブランドとコラボし、40種類以上のカプセルを展開する。これが功を奏して、20年から22年の3年間で家庭用マシンの売り上げが約5倍に成長。業務用と家庭用の売上比率は同等になった。ブランドのラインアップの幅広さは、同社ならではの強みだ。
例えば、ネスカフェ ドルチェ グストは、自社商品の他にグローバルライセンス契約を締結しているスターバックスのカプセルも扱うが、それでも30種類ほど。他のコーヒーブランドとは折り合いが悪いのか、それらを扱えないようだ。
その点、UCCの名前を捨てて新会社を設立したキューリグは、マルチブランド化を実現できたという。
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