リテール大革命

アマゾンのアパレル特化店舗が全店閉鎖 3つの「しくじり」はこれだ石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(2/3 ページ)

» 2023年11月17日 08時00分 公開
[石角友愛ITmedia]

1. ユーザーと経営サイドにおける、実店舗への期待値の乖離(かいり)

 アマゾンリテールには、Amazon 4-StarやAmazon Booksなど、アマゾンのECサイト上で好評だった商品を並べた店舗や、オンライン上のコメントが店舗で読めるようになっている設計のものがありました。

 オンライン上と同じようにアマゾンプライムメンバーであれば格安で購入できるといった特典もあり、オンラインユーザーがオフラインの店舗でも同じような期待値で買い物ができるよう工夫していました。

 一方で、アパレル店舗の経営は他の小売と比べて複雑な要素が多いといわれており、Amazon Style店舗は、消費者がアパレル分野のECサイトに寄せる期待値とかけ離れていた可能性があります。

ECサイトと実店舗とでは、求めているものが違うはずだ(写真はイメージ)

 Amazon Styleではチャンピオンやカルバン クライン、リーバイス、スティーブ マデンに至るまで、さまざまなブランドを扱っており、経営層は実店舗を展開することで、ファッション感度が高い顧客層を取り込むことも想定していたと推察できます。

 ですが、21年におけるアマゾンの販売データによると、アマゾンのECサイトでは20年にコロナの影響でスウェットやレギンス、アスレジャー(運動競技とレジャーを組み合わせた造語)関連商品の売り上げが急増してから、その傾向が続いているといいます。

 アマゾンECサイトで獲得した「カジュアルウェアをそろえている」というブランド認知と、Amazon Styleで獲得したかった比較的高価格帯のブランドの認知は、顧客層のニーズという点からもずれています。

 そのため、Amazon Styleを展開することで獲得したいと思っていた顧客層と実際に店舗へ来る顧客層の間に乖離が生まれてしまった可能性があります。

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