変革の財務経理

資金調達をしたら「大会社」になってしまった━━その時、経理がすべきこと(2/2 ページ)

» 2023年11月24日 07時00分 公開
[白井敬祐ITmedia]
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資本金とは?

 一言でいうと「株主からもらったお金」のことを指します。投資家に会社の株式を買ってもらうとお金が入ってくると思いますが、その入ってきたお金は貸借対照表の純資産の部の「資本金」という項目に累積されていきます。銀行から貸してもらったお金(借入金)は返済する必要がありますが、株主から入ってきたお金は返済する必要がないことも特徴です。

 資本金が大きいほど会社の規模を証明できるため、会社の信用力が上がります。よって、資本金が多いと銀行からの借入のしやすさや優秀な従業員が集まりやすくなるなどのメリットが存在しますが、一方で資本金が多すぎるとデメリットもあります。

資本金の金額によって税負担が増える

 税法上では資本金の金額を基準にして税率や課税の有無を判断しているものがあり、資本金の増加に伴って税負担も増加する場合があるため注意が必要です。

 税負担が増加するラインは資本金の金額が1000万円を超える場合と1億円を超える場合です。資本金が1000万円を超えると、それまで消費税の免税事業者だったとしても消費税が課税されることになったり、法人住民税の金額が上がったりします。

 資本金が1億円以下の場合は税務上、中小法人として取り扱われるため比較的低めの軽減税率が適用されますが、資本金が1億円超の場合はそれも適用外となります。

 また、資本金が1億円超の場合、法人事業税の外形標準課税が新たに課され、従業員数や床面積など利益には関係なく課税されるため、赤字でも納税の必要が生じてきます。

 さらに、その他にも資本金が1億円超の場合は交際費の損金計上や少額減価償却費で不利になったり、留保金課税など発生し税務面で不利になったりします。

photo 図-69 資本金の金額による税負担の例

資本金が増えすぎた場合の対応

 資本金を増やしすぎるとデメリットが多くあるとはいえ、資金調達をする上でどうしても資本金が増えすぎることはよくあります。その場合は「減資」という方法をとることになります。

 減資とは、資本金の金額を減らすことをいいますが、例えば出資してくれた株主にお金を返して資本金の金額を減らしたり(有償減資)、資本金から(準備金の場合が多い)「資本剰余金」に振り替えることによって資本金の金額を減らします(無償減資)。

 減資というと世間一般ではマイナスイメージを持たれがちなのですが、これによって会社規模に合わせて無駄な税負担を抑えることができるので、資本金を1億円や1000万円ちょうどにしている会社も多くあります。

photo 図-70 減資のメリット・デメリット

著者プロフィール

白井敬祐

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公認会計士。2011年に公認会計士試験合格後、清和監査法人で監査業務に従事した後、新日本有限責任監査法人及び有限責任監査法人トーマツで IFRSアドバイザリー業務や研修講師業務に従事。その後、株式会社リクルートホール ディングスで経理部に所属し、主に連結決算業務、開示資料作成業務や初年度のIFRS 有価証券報告書作成リーダーを担当。そして、2021年7月に独立開業し、現在はCPA会計学院にて会計士講座や、IFRS動画や簿記1級講座を無料で提供する「CPAラーニング」の講師を務め、近畿大学経営学部の非常勤講師として学生向けに会計士講座を開講。会計を楽しく学べる『公認会計士 YouTuber くろいちゃんねる』を運営。著書「経理になった君たちへ」「伝わる経理のコミュニケーション術」(税務研究会出版局)。


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