「大工」がいない 20年で半減、住宅業界はどうなる?(3/3 ページ)

» 2023年12月12日 17時54分 公開
[産経新聞]
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「偽装一人親方」も横行

 厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、大工の年収は10人以上の企業規模で406万6600円、1000人以上が458万5200円だった。ただ、建設職人を中心につくる全国建設労働組合総連合(全建総連)によると、大工は、個人事業主の「一人親方」や5人未満の小規模が多く、全建総連に加盟する県連や組合に行った調査によると、令和3年の大工の年収は387万9000円。日本の平均年収の443万円(国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」)を大きく下回っている。

 全建総連の賃金対策部長、長谷部康幸さんによると、ハウスメーカーや低価格の分譲住宅のパワービルダーの下請けや孫請けで発注を受けるため、単価が下がりやすく、さらに資材価格の高騰のしわよせを受けて単価が下がるケースもあるという。

 建設業界の労働問題に詳しい芝浦工業大学の蟹澤宏剛教授(建築学)によると、一人親方のなかには、本来は社員にすべき人を独立させて個人事業主とする「偽装一人親方」も多いといい、健康保険料や厚生年金保険料などの法定福利費の負担や、労働時間の管理を免れるケースが横行。社員化が進まない原因にもなっているという。

 蟹澤氏は、減少が続く大工について、令和17年には、半減して15万人、27年には、10万人を切ると予測する。国内人口の減少などで新築住宅の需要が減っても、大工の不足により、新築工事ができなくなる可能性もあると指摘。さらに老朽化した住宅の修繕なども必要となるため、職人不足の深刻化が予想される。

 蟹澤氏は、時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」で、人出不足や偽装一人親方化が深刻化する可能性もあるとし、「業界を挙げて賃金や雇用環境を改善する必要がある」と訴えた。

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