人材派遣会社が、人手不足に直面している。帝国データバンクが同業界の倒産発生状況を発表し、2023年1〜11月で倒産が72件発生していることが分かった。15年以降で最多の数字で、派遣スタッフの不足による人件費高騰が大きな重しになっているようだ。
人材派遣業界は、業種を問わず発生する人材需要を取り込み、コロナ禍でもマーケットを拡大してきた。同時に派遣スタッフの不足が深刻化。その結果、人件費高騰が大きな課題として顕在化している。
22年度に増収となった一方で、収益が悪化した派遣業者は38.7%にのぼった。高騰する人件費に対する「価格転嫁難」も深刻だ。同社の調査では、人材派遣業者は100円のコストアップに対し約33円分しか価格転嫁できていないことが分かった。自社の賃上げにも苦しむ中、派遣料金の値上げに難色を示す派遣先企業の経営事情も重なり、コストを自社負担せざるを得ない状況があるという。
業界全体では、人手不足やコスト増に対応できる業者とそうでない業者で二極化の様相を呈している。帝国データバンクは「派遣社員を確保できず、高騰するコストを転嫁しきれない中小零細企業を中心に淘汰される形で、人材派遣業者の倒産は今後も増加していく可能性がある」と警鐘を鳴らす。
負債1000万円以上で法的整理による倒産を対象に集計した。期間は11月30日まで。
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