小売業界に、デジタル・トランスフォーメーションの波が訪れている。本連載では、シリコンバレー在住の石角友愛(パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー)が、米国のリテール業界の最前線の紹介を通し、時代の変化を先読みする。
ハンドメイドやクラフト商品の作り手と、消費者が直接売買できる米国の大手マーケットプレース「Etsy(エッツィー)」が11%の従業員をレイオフすることを発表し、話題になっています。レイオフのニュースを受け、Etsyの株価は6%以上下落したということです。
レイオフの背景にはインフレなどによる個人消費の鈍化だけではなく、SHEINやTemuといった中国発の格安ECサイトとの競争激化もあります。Etsyの裏側では一体何が起きていたのか、考察してみたいと思います。
Etsyは、日本のCreemaやminneと似たサービスです。サイト上では世界中のアーティストがオリジナル作品やヴィンテージアイテムの販売を行っており、作り手であるアーティストから商品を直接購入できます。私自身、過去にEtsyを経由して何回も商品を購入したことがありますが、手作りならではのアクセサリーやキーホルダーから、スマホケースやポスター、家具に至るまで、オリジナリティー溢れる作品が並んでいるのが特徴です。
また、Etsyではアーティスト本人から直接購入するため、手書きのカードなどが添えられていることがあるのも通常のECサイトにはない良さがあります。
Etsyでは、ショップオーナーが商品の価格を自由に設定できますが、最終的な販売価格の6.5%と、郵送料の6.5%が手数料としてかかります。毎月末、Etsyはショップオーナーに手数料の詳細を記載した請求書を送付し、翌月の15日までに手数料を支払ってもらう、というビジネスモデルです。
2022年に販売価格の手数料を5%から6.5%に引き上げたことで、ショップオーナー側からボイコット運動が起きたことは記憶に新しい出来事です。この運動ではEtsyのセラーであるアーティストなどが団結してキャンペーンを開始し、他のアーティストや職人、その顧客に対し、抗議のために1週間サイトを放棄するよう促しました。
主催者によると、5000以上のショップがボイコットへの参加を表明したということです。私もこの期間にEtsyで商品を購入しようと試みたとき、好きなショップが一時的に閉鎖していたことを覚えています。
そんな手数料値上げを行ったEtsyはというと結局収益化が図れず、Eコマース・ブーム以降、事業の成長に苦戦していました。21年以降、販売量はほぼ横ばいで推移しているとのことです。11月の同社の発表によると、個人消費の減速が今四半期の収益に打撃を与える可能性が高いとしています。
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