1泊110万円で「城泊」 持続可能な観光地「世界1位」に選ばれた街(2/4 ページ)

» 2024年01月06日 08時28分 公開
[産経新聞]
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殿様気分で城に宿泊

 実際に、キタ・マネジメントが誕生した平成29年ごろ、こうした景観は存続の危機にさらされていた。

 当時、一帯の約半数の古民家が相続や修繕費の捻出が難しいことなどを理由に立ち退きや取り壊しを検討していることが市の調査で判明。中には屋根が落ちるなど廃虚化していた建物もあったという。

photo 平成16年に復元された大洲城の天守閣。宿泊できる「城泊」が話題となり観光の起爆剤となっている=愛媛県大洲市(前川康二撮影)

 市ではそれまでも、一帯の家屋修繕などに使える補助金制度を創設するなど歴史ある街並みを後世に残そうと取り組んでいた。しかし、さらに高齢化が見込まれるなか、行政だけではもはや街並みを維持するのは困難な状況になっていた。

 こうした背景から、市は民間のノウハウを活用しようと27年、まちづくりの勉強会を発足。地域おこし協力隊として入庁した井上さんや地元の伊予銀行らで街並みの再生と新たな市内観光のあり方を模索するなか、古民家を改修したホテルを展開する兵庫県での取り組みに着目し、28年にその運営会社らと連携協定を結んだ。官民で10億円の事業費を捻出し、観光地域づくり法人(地域DMO)のキタ・マネジメントも誕生、街並み再生のプロジェクトが動きだした。

 キーワードはサステナブル(持続可能)な街並みと観光。人が訪れることで収益を生み、それを街並み維持に還元する仕組みの構築にむけ「起爆剤」と位置付けたのが大洲城に宿泊できる「城泊」だった。

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