累積赤字14億円で運休の「坊っちゃん列車」 復活は?(2/4 ページ)

» 2024年01月11日 11時17分 公開
[産経新聞]
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『坊っちゃん』も乗った車両復元

 同社の坊っちゃん列車は、明治21年に市内を走る蒸気機関車として運行を開始し、夏目漱石の代表作で松山が舞台の『坊っちゃん』にも登場。長年市民の足として親しまれてきたが、路線の電化に伴い昭和31年に姿を消した。

 その後、市が観光誘客に向けた取り組みの一環として、復活を伊予鉄道に要望。これを受け、伊予鉄道は市が創設した車両導入の4分の1を補助する支援制度(2編成計9950万円)を活用し、平成13年に坊っちゃん列車を復活させた。

 坊っちゃん列車は昨年11月の運休前まで、同社が運行する路面電車の路線のうち、観光客の多い道後温泉駅−松山市駅間と、道後温泉駅−JR松山駅・古町駅間で土・日曜と祝日に1日4往復運行。古い文献などを参考に、ディーゼル車ながら当時の汽笛音や細かい装飾などを再現。駅では3人の乗務員が人力で車両を回転させて方向転換する姿などが見どころで、運休までの22年間で177万8301人が利用。市を象徴する乗り物となった。

 しかし、車両の保守点検や人件費などに費用がかさみ、毎年約2300万円〜1億円の損失を計上。今後老朽化による修繕費の増加や多額の車両更新費用も必要になるという。

 さらに、同社ではコロナ禍などで人手不足が深刻化。生活路線の運転士確保も難しい状態となるなか、公共交通の維持と収益確保を優先させた結果、運休はやむを得ない決断だったという。

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