累積赤字14億円で運休の「坊っちゃん列車」 復活は?(1/4 ページ)

» 2024年01月11日 11時17分 公開
[産経新聞]
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 蒸気機関車のようなレトロな風貌で松山市内を走る路面電車「坊っちゃん列車」が昨年11月から突如運休している。運行する伊予鉄道(松山市)が理由に挙げるのは人員不足に加え平成13年の導入以来、毎年最大1億円にも上るという赤字で、清水一郎社長は「民間企業の努力の限界を超えている」と強調。もともと市の要請を受けて運行が始まった経緯もあり、市に財政支援を求めた。市にとって「観光の重要コンテンツの一つ」(市幹部)となっている坊っちゃん列車。その存廃を巡り、市は厳しい判断を迫られている。

photo 昨年11月から運休している伊予鉄道の「坊っちゃん列車」。レトロな風貌で市の観光コンテンツの一つとなっている=松山市(前川康二撮影)

累計14億円の赤字

 「運休は苦渋の決断だ」

 昨年12月18日に野志克仁市長や有識者を集めて開かれた「坊っちゃん列車を考える会」。非公開で行われた会合の後、報道陣の取材に応じた清水社長はこう強調した。

photo 運休中の「坊っちゃん列車」について報道陣の取材に応じる伊予鉄道の清水一郎社長(前川康二撮影)

 併せて明らかにしたのは、運行開始から累計で約14億円にも上る赤字や、老朽化に伴い今後必要になる約3億円の車両更新費など。コロナウイルス禍で収益減や人員不足が深刻化するなか、1編成につき路面電車の3倍の乗務員が必要な“不採算事業”は「現状では公共交通の維持のためやめざるを得ない」と説明した。

 さらに市の財政負担が車両導入や点検費用の一部にとどまっていることについて「市の担当部署には何度も苦しい状況を相談していたが、伝わっていなかった」と不満をにじませ、「道後温泉や松山城と並ぶ観光コンテンツと位置付けるなら、例えば市がコストを負担して私たちに全面委託はできないか。それが可能なら来春再開に向けて人手は確保する」と市の主体的な関与を求めた。

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